ローコスト二階建ては1000万円で建つ?価格と実例

「月々の家賃と同じくらいの支払いで、夢のマイホームが手に入らないかな…」
「できればおしゃれな二階建てがいいけど、予算はあまりない…」
このようにお考えではありませんか?特に若い世代にとって、「ローコスト住宅」は非常に魅力的な選択肢です。中でも「1000万円で家が建つ」という広告は、一度は目にしたことがあるかもしれません。
しかし、本当に1000万円で理想の二階建て住宅が手に入るのでしょうか?
この記事では、ローコストで二階建ての家を建てたいと考えているあなたのために、以下の点を詳しく解説します。この記事を読めば、ローコスト二階建ての価格に関する疑問や不安が解消され、賢い家づくりの第一歩を踏み出せるはずです。
この記事の目次
結論:総額1,500万円からが現実的
結論からお伝えすると、広告などで見かける「1000万円の家」は、多くの場合「建物本体価格」のみを指しています。家を建てるためには、その他にも様々な費用がかかるため、実際に住み始められる状態にするための総額は1,500万円以上を見ておくのが現実的です。
建物本体価格1000万円台のカラクリ
なぜ「1000万円」という価格が打ち出されるのでしょうか。その理由は、住宅価格が大きく3つの要素で構成されているからです。
- 建物本体工事費: 家そのものを建てるための費用(全体の約7~8割)
- 付帯工事費: 電気・ガス・水道の引き込みや外構工事など、建物以外に必要な工事費(全体の約1.5~2割)
- 諸費用: ローン手数料や登記費用、税金など、工事以外にかかる費用(全体の約0.5~1割)
広告の「1000万円」は、このうちの「建物本体工事費」を指しているケースがほとんどです。つまり、この金額だけでは家は完成せず、付帯工事費と諸費用が別途必要になることを理解しておくことが重要です。
土地ありの場合の総費用シミュレーション
すでに土地をお持ちの場合の費用シミュレーションを見てみましょう。
費用の種類 | 金額の目安 |
---|---|
建物本体価格 | 1,200万円 |
付帯工事費 | 240万円(本体価格の20%) |
諸費用 | 120万円(本体価格の10%) |
合計(総額) | 1,560万円 |
このように、建物本体価格が1,200万円の家でも、総額では1,500万円を超えることが一般的です。
土地なしの場合の総費用シミュレーション
土地を持っていない場合は、上記の金額に加えて土地の購入費用が必要になります。
費用の種類 | 金額の目安 |
---|---|
建物本体価格 | 1,200万円 |
付帯工事費 | 240万円 |
諸費用 | 120万円 |
土地購入費用 | 1,000万円(※地域による) |
合計(総額) | 2,560万円 |
土地の価格はエリアによって大きく変動しますが、土地探しから始める場合は、建物費用と土地費用を合わせた総額で資金計画を立てる必要があります。
ローコスト二階建ての詳しい費用内訳
家づくりで失敗しないためには、何にどれくらいの費用がかかるのか、その内訳を正しく理解しておくことが不可欠です。ここでは、先ほど触れた3つの費用について、さらに詳しく見ていきましょう。
建物本体工事費(全体の70~80%)
建物本体工事費とは、文字通り住宅そのものを建てるための費用です。家の価格の大部分を占める中心的な費用と言えます。
- 主な内容
- 基礎工事
- 構造躯体工事(柱、梁、壁、屋根など)
- 内外装工事(外壁、壁紙、床材など)
- キッチン、トイレ、お風呂などの住宅設備費
ハウスメーカーが提示する「坪単価」は、この建物本体工事費を延床面積で割った金額を指すことが一般的です。
付帯工事費(全体の15~20%)
付帯工事費とは、建物本体以外で、生活に必要なインフラを整えるための工事費用です。これは土地の条件(高低差、地盤の固さなど)によって金額が大きく変動します。
- 主な内容
- 地盤改良工事: 地盤が弱い場合に必要な補強工事。
- 給排水・ガス工事: 敷地内に水道管やガス管を引き込む工事。
- 外構工事: 駐車場、門、フェンス、庭などの工事。
- 解体工事: 古い家が建っている場合に必要。
- 空調・照明・カーテン工事: これらが本体価格に含まれていない場合に必要。
これらの費用は見積もりの初期段階では含まれていないこともあるため、「付帯工事費を含めた見積もりですか?」と必ず確認しましょう。
諸費用(全体の5~10%)
諸費用とは、工事以外で発生する手数料や税金などの費用のことです。現金で支払う必要がある項目も多いため、事前に準備しておくことが大切です。
- 主な内容
- 住宅ローン関連費用: 事務手数料、保証料、印紙税など。
- 登記費用: 土地や建物の所有権を登録するための費用(登録免許税、司法書士報酬)。
- 各種税金: 不動産取得税、固定資産税など。
- 火災保険・地震保険料: ローンを組む際に加入が必須な場合が多い。
- 地鎮祭・上棟式などの費用: 実施する場合に必要。
価格帯別の二階建て建築実例と間取り
限られた予算で、実際にどのような二階建てが建てられるのでしょうか。ここでは価格帯別に建築実例のイメージと間取りのポイントをご紹介します。
総額1000万円台の建築実例と間取り
総額1000万円台で二階建てを実現するには、徹底したコストカットが必要です。


- 建物の特徴
- 延床面積は25坪~30坪程度が目安。
- 外観は凹凸のないシンプルな箱型の「総二階建て」が基本。
- 屋根はコストを抑えられる「片流れ屋根」や「切妻屋根」が多くなります。
- 間取りのポイント
- 1階にLDKと水回りを集約し、2階に寝室と子供部屋を配置するシンプルな構成。
- 廊下を極力なくし、居住スペースを最大限に確保。
- 収納はウォークインクローゼットなど1箇所にまとめる工夫でコストを削減。
総額1500万円台の建築実例と間取り

総額1500万円台になると、少しずつ選択肢が広がります。
- 建物の特徴
- 延床面積は30坪~35坪程度まで可能に。
- 外壁材や床材など、一部の仕様で好みのものを選べるようになる。
- 小さなバルコニーや、デザイン性のある窓を設置する余裕も出てきます。
- 間取りのポイント
- LDKに隣接する畳コーナーや、書斎スペースを設けることが可能に。
- パントリー(食品庫)やシューズインクロークなど、人気の収納スペースも検討できます。
- 家事動線を意識した間取りにすることで、暮らしの満足度が高まります。
総額2000万円未満の建築実例と間取り

総額2000万円に近づくと、デザインや設備の自由度がさらに高まります。
- 建物の特徴
- 延床面積35坪以上も視野に入り、ゆとりのある空間が実現可能。
- 外観デザインに一部凹凸をつけたり、こだわりの外壁材を選んだりできます。
- 太陽光発電システムなど、省エネ設備を導入することも検討できます。
- 間取りのポイント
- 吹き抜けを設けて、開放感のあるリビングを実現。
- キッチンのグレードを上げたり、タンクレストイレを選んだりと、設備の選択肢が豊富になります。
- 家族のライフスタイルに合わせた、より自由な間取り設計が可能です。
ローコスト住宅のメリット・デメリット
ローコスト住宅には大きな魅力がありますが、注意すべき点も存在します。メリットとデメリットの両方を理解し、納得のいく家づくりを進めましょう。
メリット:総支払額を抑えローンを組みやすい
ローコスト住宅最大のメリットは、やはり価格の安さです。
- 総支払額を抑えられる
建物価格が安い分、住宅ローンの借入額を減らすことができます。これにより、月々の返済負担が軽くなり、教育費や趣味など、暮らしの他の部分にお金を使いやすくなります。 - 住宅ローンを組みやすい
年収に不安がある場合でも、借入額が少なければ住宅ローンの審査に通りやすくなる傾向があります。若いうちからマイホームを持つという夢を実現しやすくなります。 - 家賃並みの支払いで資産が持てる
現在の家賃と変わらない、あるいはそれ以下の支払いで自分の家という資産が手に入ります。
デメリット:仕様・設備の自由度が低い
価格を抑えるため、ローコスト住宅にはいくつかの制約があります。
- 規格化されたプランが中心
間取りやデザインがある程度決まっている「規格型住宅」が多いため、完全自由設計に比べると間取りの自由度は低くなります。 - 選べる仕様・設備が限られる
外壁材、床材、キッチン、バスなどの仕様は、標準仕様の中から選ぶのが基本です。オプションで変更することも可能ですが、その分価格は上がってしまいます。「こだわりたい部分」と「標準で良い部分」を明確にすることが大切です。
デメリット:性能面(断熱・気密・耐震)の確認が必須
「安かろう悪かろう」ではないか、という不安は誰もが持つものです。特に以下の性能については、契約前に必ず確認しましょう。
- 断熱性・気密性
断熱性や気密性が低いと、夏は暑く冬は寒い家になり、光熱費が高くなってしまいます。断熱性能を示す「UA値」や気密性能を示す「C値」の目標値などを確認すると良いでしょう。 - 耐震性
地震の多い日本では、耐震性は命を守る重要な性能です。建築基準法で定められた最低限の基準は満たしていますが、より安心な「耐震等級3」を取得しているかどうかも一つの判断基準になります。
安く家を建てるためのコストダウン術
同じ予算でも、工夫次第で満足度の高い家を建てることは可能です。ここでは、設計段階でできる具体的なコストダウン術をご紹介します。
家の形はシンプルな総二階にする
家の外壁は、凹凸が多いほど面積が広くなり、材料費や工事の手間が増えてコストが上がります。1階と2階がほぼ同じ面積のシンプルな箱型(総二階)にすることで、外壁面積を最小限に抑え、コストを削減できます。
屋根の形状を片流れか切妻にする
屋根も形状が複雑になるほど高価になります。1枚の面で構成される「片流れ屋根」や、シンプルな二等辺三角形の「切妻(きりづま)屋根」は、構造が単純で材料も少なく済むため、コストを抑えるのに効果的です。
間仕切りを減らしワンフロアを広く使う
壁やドアなどの間仕切りを減らすこともコストダウンにつながります。例えば、LDKを一つの大きな空間にしたり、子供部屋を将来的に仕切れるように最初は広い一部屋にしておいたりする工夫です。開放感が生まれるというメリットもあります。
水回りの設備を1箇所に集中させる
キッチン、洗面所、お風呂、トイレといった水回りの設備は、できるだけ近い場所にまとめましょう。配管工事が短く、シンプルになるため、工事費用を大幅に節約できます。家事動線がスムーズになるという利点もあります。
オプションは避け標準仕様を基本にする
ハウスメーカーが用意する「標準仕様」は、大量仕入れによって価格が抑えられています。魅力的なオプションはたくさんありますが、一つひとつ追加していくと、あっという間に予算オーバーになってしまいます。まずは標準仕様を基本に考え、どうしても譲れない部分だけをオプションにするというメリハリが重要です。
二階建てと平屋のコスト比較
ローコスト住宅を検討する際、「二階建てと平屋、どちらが安いの?」という疑問もよく聞かれます。コスト面での違いを理解しておきましょう。
同じ延床面積なら二階建てが割安
結論として、同じ延床面積で建てる場合、一般的に二階建ての方が平屋よりも建築コストは安くなります。
基礎工事と屋根面積での費用差
なぜ二階建ての方が割安なのでしょうか。その理由は、家づくりの中でも特にコストがかかる「基礎工事」と「屋根工事」の面積にあります。
例えば、延床面積30坪の家を建てる場合を考えてみましょう。
- 平屋: 30坪分の基礎と30坪分の屋根が必要。
- 二階建て: 1階と2階が各15坪なら、15坪分の基礎と15坪分の屋根で済む。
このように、二階建ては基礎と屋根の面積が平屋の半分で済むため、その分の材料費や工事費を抑えることができるのです。
狭い土地でも建てられる二階建ての利点
コスト面だけでなく、土地の広さも重要な要素です。特に都市部など土地が限られているエリアでは、狭い土地でも必要な居住面積を確保できる二階建てが有利です。平屋で同じ面積を確保しようとすると、より広い土地が必要になり、結果的に土地代を含めた総額が高くなる可能性があります。
まとめ
今回は、ローコストの二階建て住宅について、価格のカラクリから具体的なハウスメーカー、コストダウンの秘訣まで詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 「1000万円の家」は本体価格
実際に住める状態にするには、付帯工事費や諸費用を含め、総額で1,500万円以上が現実的な目安です。 - 費用内訳の理解が重要
何にいくらかかるのかを把握することで、予算オーバーを防ぎ、納得のいく資金計画が立てられます。 - ハウスメーカー選びが成功のカギ
ローコスト住宅の実績が豊富で、信頼できるパートナーを見つけることが最も大切です。各社の特徴を比較検討しましょう。 - コストダウンには工夫が必要
家の形をシンプルにしたり、標準仕様を活かしたりすることで、予算内で満足度の高い家づくりが可能です。 - 性能面の確認を忘れずに
価格だけでなく、断熱性や耐震性など、長く快適に暮らすための住宅性能もしっかりチェックしましょう。
ローコスト住宅は、決して「安かろう悪かろう」ではありません。正しい知識を身につけ、信頼できるプロと協力することで、予算内で理想のマイホームを手に入れることは十分に可能です。
まずは「カタログを取り寄せたり」、「相談会に参加したり」して、家づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
この記事の担当:

豊栄建設家づくり編集部
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