ローコスト住宅の断熱性は低い?後悔しない知識と会社選び

「マイホームは欲しいけど、予算は抑えたい…」そう考えたとき、魅力的な選択肢となるのがローコスト住宅です。しかし、価格が安い分、「冬は寒くて夏は暑いのでは?」「断熱性が低くて後悔しないだろうか?」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、正しい知識を持って会社を選べば、ローコスト住宅でも断熱性の高い快適な家を建てることは十分可能です。

この記事では、ローコスト住宅の断熱性で後悔しないために、以下の点を分かりやすく解説します。

  • ローコスト住宅が寒いと言われる本当の理由
  • 快適な暮らしに不可欠な「高気密高断熱」の基本
  • 断熱性能を高めるための具体的な仕様の選び方
  • 予算内で理想の家を建てるための会社選びのポイント

この記事を読めば、断熱性に関する不安を解消し、予算内で暖かく快適なマイホームを実現するための第一歩を踏み出せるはずです。

ローコスト住宅が寒いと言われる理由

なぜ、「ローコスト住宅は寒い」というイメージが根強いのでしょうか。それには、コストを抑えるための構造的な理由がいくつか関係しています。

理由1:断熱・気密工事のコストカット

住宅の断熱性や気密性は、断熱材を隙間なく施工したり、気密テープを丁寧に貼ったりといった、職人の手作業に大きく左右されます。

ローコスト住宅では、工期短縮や人件費削減のために、これらの細かな作業が簡略化されるケースがあります。結果として、目に見えない隙間が生まれ、そこから熱が逃げたり、冷気が侵入したりして「寒い家」の原因となってしまうのです。

理由2:標準仕様の窓や断熱材の性能

ローコスト住宅の価格は、あらかじめ決められた「標準仕様」をベースに設定されています。この標準仕様で採用される断熱材や窓の性能が、必ずしも高くない場合があります。

例えば、断熱材は最低限の厚みであったり、窓は熱を通しやすいアルミサッシが標準だったりすることがあります。もちろん、オプションで性能を上げることは可能ですが、その分追加費用が発生するため、予算との兼ね合いが重要になります。

理由3:高気密高断熱の設計ノウハウ不足

高気密高断熱の家を建てるには、断熱材や窓の性能だけでなく、家全体の熱の出入りや空気の流れを計算した専門的な設計ノウハウが必要です。

すべてのローコスト住宅会社が、このノウハウを十分に持っているとは限りません。価格の安さを最優先するあまり、断熱・気密設計がおろそかになってしまうと、性能の低い家になってしまう可能性があります。

高気密高断熱住宅の基本知識

ハウスメーカーの担当者と対等に話を進めるためにも、断熱性・気密性に関する基本的な言葉の意味を知っておきましょう。

断熱性能を示すUA値とは

UA値(外皮平均熱貫流率)とは、「家全体からどれだけ熱が逃げやすいか」を示す数値です。このUA値が小さければ小さいほど、熱が逃げにくく断熱性能が高いことを意味します。

家の壁、屋根、床、窓など、外気に接する部分(外皮)全体を対象に計算されます。高断熱な家を目指すなら、まずこのUA値を確認することが重要です。

気密性能を示すC値とは

C値(相当隙間面積)とは、「家全体にどれくらいの隙間があるか」を示す数値です。床面積1㎡あたりに存在する隙間の面積(㎠)で表され、このC値が小さければ小さいほど、隙間が少なく気密性が高い家ということになります。

気密性が低いと、いくら高性能な断熱材を使っても隙間から熱が逃げてしまい、計画的な換気もできなくなります。C値は専門の機械で実際に測定(気密測定)しないと分からないため、契約前に気密測定を実施してくれるかどうかも確認しましょう。

快適な暮らしに必要な性能の目標値

では、UA値とC値は具体的にどれくらいの数値を目指せば良いのでしょうか。以下に、多くの専門家が推奨する目標値の目安をまとめました。

  • UA値:0.6以下(できれば0.46以下)を目指す
    • 国が定める省エネ基準(ZEH基準)では、地域によりますが0.6以下がひとつの目安です。より高い断熱性を求めるなら、HEAT20のG2グレードにあたる0.46(6地域の場合)を目指すと、冬でも暖かく快適な室温を保ちやすくなります。
  • C値:1.0以下(できれば0.5以下)を目指す
    • 一般的にC値1.0以下で高気密住宅とされます。より性能にこだわるなら0.5以下を目標にすると、冷暖房の効率が格段に上がり、光熱費の削減にも繋がります。

「このUA値とC値を達成できますか?」と、ハウスメーカーや工務店に具体的に質問することが、高性能な家づくりの第一歩です。

断熱性能を高める仕様の選び方

ローコスト住宅でも、仕様の選び方次第で断熱性能を大きく向上させることができます。コストと性能のバランスを見ながら、賢く選択しましょう。

断熱材の種類別性能と費用比較

断熱材は家の性能を左右する重要なパーツです。ローコスト住宅でよく使われる代表的な断熱材の特徴を比較してみましょう。

  • グラスウール
    • ガラス繊維でできた、最も一般的な断熱材です。コストが安く、多くのハウスメーカーで標準採用されています。正しく隙間なく施工されれば高い断熱性能を発揮しますが、湿気に弱く、施工精度が性能に直結します。
  • ロックウール
    • 玄武岩などを原料とする鉱物繊維の断熱材。グラスウールと似ていますが、耐火性や吸音性に優れています。コストはグラスウールより少し高めです。
  • 発泡ウレタンフォーム(現場発泡)
    • 現場で液体を吹き付けて発泡させるタイプの断熱材です。細かい部分にも隙間なく充填できるため、高い気密性を確保しやすいのが最大のメリット。コストはグラスウールより高くなりますが、断熱・気密を両立させたい場合に人気の選択肢です。
  • セルロースファイバー
    • 新聞紙などをリサイクルして作られる、環境に優しい断熱材です。断熱性能に加え、調湿性や防音性にも優れています。専門的な施工が必要で、コストは比較的高めです。

窓サッシとガラスの選び方

家の中で最も熱の出入りが激しい場所は「窓」です。窓の性能を高めることは、家全体の断熱性を上げる上で最も効果的と言えます。

  • サッシの素材
    • 樹脂サッシ: 熱伝導率が低く、最も断熱性能が高いサッシです。結露の発生も抑えられます。
    • アルミ樹脂複合サッシ: 室外側がアルミ、室内側が樹脂でできています。樹脂サッシよりは性能が劣りますが、アルミサッシよりは格段に断熱性が高まります。
    • アルミサッシ: 熱を伝えやすく断熱性能が低いため、近年の高断熱住宅ではあまり採用されません。
  • ガラスの種類
    • ペアガラス(複層ガラス): 2枚のガラスの間に空気層があるガラス。標準的に使われます。
    • Low-Eペアガラス: ペアガラスの表面に特殊な金属膜(Low-E膜)をコーティングしたもの。夏の日差しや冬の室内の熱が逃げるのを防ぎ、断熱効果を大きく向上させます。
    • トリプルガラス: 3枚のガラスで構成され、最高クラスの断熱性能を誇ります。コストは高くなりますが、寒冷地などで採用されます。

ローコスト住宅でも、「アルミ樹脂複合サッシ+Low-Eペアガラス」を最低ラインとして検討することをおすすめします。

換気システム(第一種・第三種)の違い

高気密な家では、汚れた空気を排出し、新鮮な空気を取り入れるための「24時間換気システム」が法律で義務付けられています。換気システムには主に2つの種類があります。

  • 第一種換気
    • 給気も排気も機械で行うシステムです。多くの製品に「熱交換」機能が付いており、排気する空気の熱を回収して、取り込む新鮮な空気を室温に近づけてから給気します。そのため、冬でも冷たい空気がそのまま入ってくることがなく、快適性と省エネ性を両立できます。初期費用やメンテナンスコストは高めです。
  • 第三種換気
    • 排気は機械(ファン)で行い、給気は壁に設けた給気口から自然に行うシステムです。構造がシンプルでコストが安いのがメリット。しかし、外の空気がそのまま入ってくるため、冬場は給気口付近が寒く感じることがあります。

光熱費や快適性を重視するなら第一種換気、初期費用を抑えたいなら第三種換気と、ライフプランに合わせて選びましょう。

後悔しないためのチェックポイント

理想のローコスト住宅を建てるためには、会社選びと打ち合わせが非常に重要です。以下のポイントを必ずチェックしましょう。

会社の標準仕様と断熱材を確認する

「高断熱」と宣伝していても、その基準は会社によって様々です。カタログのイメージだけでなく、「標準仕様書」を取り寄せ、断熱材の種類や厚み、窓サッシのメーカー・型番まで具体的に確認しましょう。不明な点は遠慮なく質問することが大切です。

希望のUA値・C値を明確に伝える

「暖かい家にしてください」という曖昧な伝え方では、認識のズレが生まれる可能性があります。「UA値は0.6以下、C値は1.0以下を希望します」のように、具体的な数値目標を伝えましょう。その数値が実現可能か、そのためにはどんな仕様が必要で、費用はいくらかかるのか、明確な回答を求めてください。

長期優良住宅の基準を満たせるか

長期優良住宅とは、耐震性や省エネ性など、国が定めた基準をクリアした質の高い住宅のことです。この認定を受けるには、一定以上の断熱性能(断熱等性能等級5以上)が求められます。

長期優良住宅に対応できるかどうかは、その会社の技術力や性能への意識を測る一つのバロメーターになります。税金の優遇措置などのメリットもあるため、対応可能か確認してみましょう。

建てた人の声や施工実績を調べる

その会社が実際に建てた家が、本当に暖かく快適なのかを知るには、施主の声を聞くのが一番です。公式サイトの施工事例はもちろん、SNSや口コミサイトでリアルな評判を調べることをおすすめします。「〇〇(会社名) 寒い」「〇〇 光熱費」などで検索してみるのも良いでしょう。

高断熱が得意なローコスト住宅会社

ここでは、断熱性など性能にも力を入れている代表的なローコスト住宅会社や、地域の優良工務店の探し方をご紹介します。

おすすめのハウスメーカー3選

全国展開しているハウスメーカーの中から、高気密高断熱に定評のある会社をいくつかご紹介します。

  • アイフルホーム
    • LIXIL住宅研究所が運営するフランチャイズチェーン。断熱性能の基準となるUA値やC値を全棟で公表しており、性能に対する意識の高さがうかがえます。ZEH基準を標準仕様でクリアする商品も多く、コストと性能のバランスが良いと評判です。
    • (参考:https://www.eyefulhome.jp/)
  • アエラホーム
    • 「外張断熱」と「吹付断熱」を組み合わせた独自の工法で、高い断熱性・気密性を実現しています。全棟で気密測定を実施し、性能を数値で保証している点も安心材料です。
    • (参考:https://aerahome.com/)
  • タマホーム
    • ローコスト住宅の代表格ですが、標準仕様で長期優良住宅に対応するなど、住宅性能の向上にも力を入れています。豊富な商品ラインナップの中から、予算に合わせて断熱仕様を選べるのが魅力です。
    • (参考:https://www.tamahome.jp/)

※上記は一例です。各社の仕様や価格は常に変動するため、必ず公式サイトやお近くの店舗で最新の情報をご確認ください。

地域の優良工務店の探し方

大手ハウスメーカーだけでなく、地域に根差した工務店の中にも、高気密高断熱住宅を得意とする会社は数多く存在します。むしろ、社長や設計士のこだわりが強く、非常に高性能な家を適正価格で建ててくれるケースも少なくありません。

  • 性能特化型の住宅情報サイトで探す
  • 地域の建築家や設計事務所に相談する
  • 完成見学会や構造見学会に積極的に参加する

見学会では、実際に使われている断熱材や施工の様子を確認できるため、会社の技術力を判断する絶好の機会です。

住宅展示場で性能を体感する

住宅展示場のモデルハウスは、豪華なオプション仕様になっていることが多いですが、採用されている窓の種類や断熱材の構造などを実際に見て触れることができます。

最近では、宿泊体験ができるモデルハウスも増えています。一晩過ごしてみることで、実際の断熱性や気密性、換気システムの静音性などをリアルに体感でき、家づくりの大きな参考になります。

予算1000万円台で建てる家の性能

「予算1000万円台」という厳しい条件でも、高断熱な家を諦める必要はありません。ポイントを押さえれば、快適な住まいは実現できます。

1000万円台注文住宅の断熱仕様

予算1000万円台で高断熱を目指す場合、「選択と集中」が重要になります。

  • 家の形をシンプルにする: 凹凸の多い複雑な形状は、外壁の面積が増えてコストアップに繋がります。総二階建てのようなシンプルな箱型の家は、コストを抑えつつ断熱性能も高めやすくなります。
  • 断熱性能にコストを集中させる: 内装や設備のグレードは後からでも変更できますが、断熱材や窓の性能は簡単には変えられません。初期投資として、断熱・気密性能に予算を優先的に配分するのが賢い選択です。
  • 標準仕様をうまく活用する: ハウスメーカーが大量に仕入れることでコストを抑えている標準仕様の中から、最も性能の高いものを選ぶことで、オプション費用を抑えられます。

建築事例と実際の年間光熱費

例えば、延床面積30坪、1000万円台後半で建てた高気密高断熱住宅の事例では、以前住んでいた賃貸アパートと比較して、年間の光熱費が5万円以上安くなったというケースもあります。

夏のエアコンはすぐに効き、冬は小さな暖房器具一つで家全体が暖かい状態を保てるため、結果的に光熱費が下がるのです。これは、初期投資を断熱性能にかけたことが、将来のランニングコスト削減に繋がった良い例と言えるでしょう。

性能向上のためのオプション費用

標準仕様から性能を上げる場合、どれくらいの追加費用がかかるのでしょうか。あくまで目安ですが、以下のようなイメージです。

  • 窓のグレードアップ(アルミ樹脂複合→オール樹脂): 1軒あたり20~40万円程度
  • 断熱材の変更(グラスウール→吹付ウレタン): 1軒あたり30~50万円程度
  • 換気システムの変更(第三種→第一種熱交換): 20~40万円程度

これらの費用をかけても、毎月の光熱費削減や快適性の向上を考えれば、十分に元が取れる投資と考えることができます。

まとめ

ローコスト住宅だからといって、断熱性を諦める必要は全くありません。「ローコスト住宅は寒い」というのは、過去のイメージや、知識不足による失敗例から生まれた言葉です。

後悔しないためには、以下の3つのポイントを心に留めておきましょう。

  1. 正しい知識を身につける: UA値やC値といった基本的な指標を理解し、断熱材や窓の重要性を知ることが第一歩です。
  2. 性能を数値で判断する: 「暖かい」という感覚的な言葉ではなく、「UA値は0.46以下」のように具体的な数値で要望を伝え、実現できる会社を選びましょう。
  3. 見えない部分にこそ投資する: 家の快適性を左右する断熱・気密性能は、完成すると見えなくなってしまいます。初期費用はかかっても、この部分にしっかり投資することが、将来の光熱費削減と快適な暮らしに繋がります。

この記事が、あなたの理想のマイホームづくりの一助となれば幸いです。まずは気になるハウスメーカーや工務店の資料請求や見学会への参加から始めてみてはいかがでしょうか。

この記事の担当:

豊栄建設家づくり編集部

家づくりのヒントや住まいの最新情報を分かりやすくご紹介。皆さまの理想の住まいづくりにお役立てください。

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