ローコスト住宅のデメリットは?後悔しないための知識を徹底解説

ローコスト住宅は、安く建てられる一方で「思っていたのと違った」などと後悔する声も少なくありません。価格だけでなく、品質やサポート体制も、後悔しない家づくりには欠かせない重要な要素です。
この記事では、ローコスト住宅のデメリットとメリットを踏まえつつ、それでも選ばれる理由や、向いている人の特徴までを詳しく紹介します。納得のいく住まいづくりに向けて、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
ローコスト住宅のデメリット
ローコスト住宅は価格の安さが魅力ですが、仕様の制約や将来的なメンテナンス費用など、見落としがちなデメリットも存在します。ここでは、ローコスト住宅を選ぶ際に注意すべきポイントを紹介します。
1. 標準仕様の制約
ローコスト住宅は、コストを抑えるために建材や間取りを規格化しているケースが多く、設計や設備の自由度に制約があります。
たとえば、以下のようなケースが挙げられます。
制約の内容 | 想定される困りごと |
設備や間取りの変更が難しい | 細かな希望が反映できず、理想通りの家にならない可能性がある |
グレードアップに追加費用が発生する | 仕様を上げるごとにコストが増え、最終的に“ローコスト”とは言えない価格になりやすい |
低グレードの建材が使われやすい | 劣化が早いと将来的なメンテナンス費用がかさむ可能性がある |
これらを踏まえて、希望通りの家づくりができなかったり、予想外の出費に悩まされたりしないよう、標準仕様の詳細や将来の維持費も含めて、あらかじめ十分に確認しておきましょう。
2. 性能の限界
ローコスト住宅は建築費の安さが魅力ですが、断熱性や気密性が十分でないケースも見られます。
たとえば、断熱材にはさまざまなグレードがありますが、価格を重視して性能の低い素材が使われると冷暖房効率が落ち、結果として光熱費の負担が増えてしまいます。せっかく初期費用を抑えても、住み始めてからのコストが高くつけば本末転倒です。さらに、断熱性や気密性の不足は、結露やカビの発生、室内温度のムラといった問題を引き起こし、快適性や健康面にも影響を及ぼします。
ローコスト住宅を選ぶ際には価格だけでなく、使用される建材の性能や施工品質、断熱性能や気密性能なども確認しておくと安心です。
3. アフターサービスの対応
入居後の安心感や住まいの快適さに大きく影響するため、契約前に各社が提供しているアフターサービスの内容をしっかり比較検討しましょう。
確認しておきたい項目は、以下のとおりです。
確認項目 | チェックポイント | 想定される困りごと |
保証書の内容 | 構造躯体・防水・設備など部位ごとの保証年数と、保証対象の範囲が書かれているか | 保証期間が部位ごとに異なることに気づかず、トラブル時に無償対応を受けられない可能性がある |
定期点検の頻度とその範囲 | 引き渡し後に何回点検が行われるのか、その内容はどの程度までカバーされているのか | 点検が不十分だと不具合の発見が遅れ、修理費用や住環境の悪化につながる恐れがある |
実際の入居者の評判 | SNS、住宅口コミサイト、近隣の住人の評判、トラブル事例の有無をリサーチ | 公式情報だけではわからない施工不良や対応の悪さに後から気づくリスクがある |
これらを丁寧に確認しておくと、入居後に「こんなはずじゃなかった」と後悔するリスクを減らし、安心して長く住み続けられる住まいにつながります。
4. 設計の自由度が低い
ローコスト住宅は、間取りや設備などを一から自由に決められるフルオーダー型とは異なり、用意されたプランや設備の中から選ぶセミオーダー型が主流です。そのため、間取りや設備を自由にカスタマイズするのが難しい傾向にあります。
たとえば、キッチンなどの水回りや家事動線にこだわりたくても、間取りを変更する場合には以下のような制約が生じる可能性があります。
- 給排水管や給湯設備の工事が複雑になる
- 配置を見直すための設計変更が必要になる
- 追加の施工費が発生する可能性がある
- 希望通りに対応してもらえない場合がある
ローコスト住宅を選ぶ際は、どこまで希望が反映できるかをあらかじめ把握しておくと安心です。
5. 広告価格とのギャップ
「1,000万円台から建てられる家」という広告の多くは、建物本体価格のみを示しており、実際にかかる総費用とは異なるケースが多いです。そのため、表示価格だけで判断せず詳しく確認しておくと安心です。実際に暮らせる状態の家にするには、本体価格に加えて様々な追加費用がかかります。
具体的には、以下のような費用が必要になります。
- 外構工事、給排水工事、地盤改良などの工事費
- 照明やカーテンなど、生活に必要な設備の費用
- 登記や火災保険、ローン手数料や引越しなどにかかる諸費用
これらの費用も含めて、総額費用を事前に把握しておけば、後になって「こんなにかかるとは思わなかった」といった不安や後悔を防げます。
ローコスト住宅のメリット
価格の安さが注目されがちなローコスト住宅ですが、実はそれ以外にも見逃せないメリットが多数あります。ここでは、ローコスト住宅ならではの魅力を紹介します。
1. 生活にゆとりが生まれる
「家を建てたいけど、建築費用はできるだけ抑えたい」という方におすすめなのが、ローコスト住宅です。
注文住宅の建築費用は地域や仕様によって幅がありますが、国土交通省による住宅市場動向調査によると、土地購入費用を除いた注文住宅の建築資金の全国平均は、約36.7坪(121.3㎡)で4,319万円でした。これを坪単価に換算すると、約118万円になります。
ローコスト住宅は、坪単価30万〜50万円で建てられることが多く、物価上昇の影響で価格は上がってきているものの、一般的な価格帯の注文住宅に比べると建築費用を抑えやすいといえるでしょう。
実際に、一般的な住宅とローコスト住宅とでは、どれくらい建築費に差が出るのでしょうか。国土交通省のデータをもとに、坪単価ベースで比較すると以下の通りです。
▼坪単価と建築費の比較(36.7坪の場合)
住宅タイプ | 坪単価の目安 | 建築費の目安 |
一般的な注文住宅 | 約118万円 | 約4,319万円 |
ローコスト住宅 | 30〜50万円 | 約1,000〜1,830万円 |
このように、ローコスト住宅なら建築費用を大幅に抑えられるため、浮いた費用を教育資金や老後資金に老後の備えにまわすなど、家計にゆとりを持たせた暮らしが実現しやすくなります。
参照:国土交通省「令和5年度住宅市場動向」PDF93、116ページより
・坪数は住宅面積(㎡)×0.3025で算出
・坪単価は建築資金(万円)÷住宅面積(坪数)で算出
2. 工期が短く入居までが早い
一般的な注文住宅は、約4〜6ヶ月の工期がかかるのが一般的です。一方でローコスト住宅は、あらかじめ間取りや設備が規格化されている仕様が多く、現場での作業工程も効率化されているため、約3ヶ月前後と短くなる傾向にあります。
次のような事情がある方には、早期の住まい確保がおすすめです。
- 賃貸契約の更新前に引っ越したい方
- お子さまの入学や進学時期に合わせたいご家庭
- 転勤や出産などで、できるだけ早く住まいを整えたい方
時期を意識した住み替えを希望する方にとっては、工期の短さは大きな魅力といえるでしょう。
3. 必要な部分だけグレードアップも可能
ローコスト住宅というと「すべてが最低限仕様」と思われがちですが、実際には必要な部分にだけコストをかけるなど、自分らしい家づくりを叶えられます。なぜなら、多くのローコスト住宅は標準仕様をベースにしつつ、設備やデザインを自由に選べるオプション制度を取り入れているからです。
たとえば、以下のような部分的なグレードアップが可能です。
グレードアップ箇所 | グレードアップ内容の例 | メリット |
キッチン | 食洗機、タッチレス水栓の導入 | 家事の時短・衛生的 |
浴室 | 保温浴槽、浴室暖房乾燥機を追加 | 快適な入浴・冬場も安心 |
トイレ | 自動洗浄機能付き便器、節水型タイプを選択 | 掃除が簡単・水道代の節約 |
床材(リビング) | 合板フローリングから無垢材フローリングへ変更 | 温かみのある空間・肌触りが良い |
窓 | 一部の窓を断熱性の高いペアガラスに変更 | 冷暖房効率アップ・結露対策 |
このように、コストを抑えながらも満足度の高い住まいを実現できるのがローコスト住宅の大きな強みです。過剰な設備ではなく「本当に必要なものだけ」を選んで、無駄のない家づくりができます。
4. 打ち合わせの回数が少ない
ローコスト住宅は、あらかじめ間取りや仕様がある程度規格されているため、打ち合わせや決定事項が少なく、比較的スムーズに家づくりが進められるのが特徴です。
キッチンや壁紙、床材の色、設備のグレードなども選択肢が限られている分、あれこれ悩まずに済むという魅力があります。
そのため、以下のような状況の方は、特にメリットが実感しやすいでしょう。
- 共働きで打ち合わせの時間が取りにくい方
- 小さなお子さまがいて、長時間の打ち合わせが難しい方
- 建築予定地が遠方で、頻繁に足を運べない方
打ち合わせの負担を軽減し、限られた時間でもスムーズに家づくりを進めたい方にぴったりです。
5. 建て替えのハードルが低い
建築費を抑えられるローコスト住宅は、将来的に建て替えを検討する際のハードルが低いという点でも魅力があります。ライフスタイルや家族構成の変化に合わせて、住まいを柔軟に見直したいと考えたときに、こうした「変化に対応しやすい住宅」を選ぶということが一つの選択肢になっています。
たとえば「将来は二世帯住宅に建て替えたい」「子どもが独立したら、バリアフリーの家に住み替えたい」など、住まいに対するニーズは時間の経過とともに変化するものです。しかし、一般的な注文住宅で高額な住宅ローンを抱えている場合、新たにローンを組んでの建て替えは難しいのではないでしょうか。
その点、初期の建築費を抑えられるローコスト住宅であれば、将来的な建て替えや住み替えの選択肢も視野に入れやすく、柔軟な暮らし方を考えている方には大きなメリットといえるでしょう。
ローコスト住宅に向いている人
ローコスト住宅は、すべての人に適しているわけではありませんが、価値観やライフスタイルによっては非常に合理的な選択肢となります。たとえば、以下のような考えを持っている方には特におすすめです。
- 住宅にかける予算をできるだけ抑えたい
- 家の設備や間取りに強いこだわりはなく、シンプルな暮らしを好む
- 標準仕様を基本とし、必要な部分だけを自分の好みに合わせてカスタマイズしたい
- 新築には住みたいが、住宅ローンの借入額が限られている
ローコスト住宅は、必要最低限の設備でも満足できる方や将来の家計負担を抑えたい方にとって、「無理のない予算でマイホームを手に入れる」ための賢い選択肢といえるでしょう。
価格を抑えつつも、自分たちらしい暮らしを実現したい方は、ローコスト住宅の仕組みを理解したうえで前向きに検討してみる価値があります。
ローコスト住宅を選ぶ際の注意点
ローコスト住宅を選ぶ際は、価格の安さだけで決めてしまうのは避けたいところです。以下の3つのポイントは、必ずチェックしておきましょう。
1. 業者選び
ローコスト住宅を扱う業者は全国に多数ありますが、すべてが同じ品質や対応力を持っているとは限りません。価格の安さだけで判断せず、総合的な視点で業者を見極めましょう。
▼業者選びの確認ポイント
確認ポイント | 確認内容 | |
実績・信頼性 | 施工実績 | 過去の事例から設計力・対応範囲・仕上がりの質を確認 |
利用者の声 | 口コミ・評判から対応の丁寧さや満足度を把握 | |
アフターサービス | 点検・補修の範囲や対応スピード、実際の対応実績を確認 | |
保証内容 | 不具合発生時の対応範囲や保証の期間・条件などを事前に確認 | |
担当者の対応力 | 丁寧なヒアリング | 要望やライフスタイルを深く理解しようとする姿勢があるか |
的確な提案 | 現実的で具体性のあるプランを提案しているか | |
迅速な対応 | 問い合わせや相談へのレスポンスが早く、対応がスムーズか | |
説明の透明性 | 費用や工程の説明が明確で、不明点や曖昧な部分がないか | |
誠実な姿勢 | 強引な営業をしない、他社の批判を避けるなど節度ある対応か |
これらのポイントを踏まえて担当者と接すると、信頼できる業者なのかを見極める手掛かりになります。
2. 見積もりは総額で確認
見積もりを見る際は、建物本体価格だけで判断せず、実際に暮らし始めるまでに必要なすべての費用を含めた総額での確認が大切です。
見積もりを確認する際は、以下の点に注意しましょう。
- 外構工事が含まれているか
- 給排水工事・地盤改良の有無
- 登記・火災保険・ローン手数料などの諸経費
- 「一式」の内訳が明記されているか
- 他社と比較する際は、金額だけでなく内容も確認
これらが見積もりに含まれていないと、契約後に追加費用がかかり、予算オーバーにつながる恐れがあります。また、複数の住宅メーカーから見積もりを取る際も、金額だけでなく、何が含まれているかもしっかり確認しましょう。
3. アフターサービスの保証
新築住宅には、住宅瑕疵担保履行法により10年間の瑕疵担保責任が法律で義務付けられています。しかし、それ以外の点検や修理・メンテナンス体制については、住宅メーカーごとに大きな差があります。アフターサービスの内容や対応体制は、住宅メーカーによって大きく異なります。特にローコスト住宅では、コスト削減の一環として最低限のサポートにとどまっているケースもあるため注意が必要です。
たとえば、以下の点は事前に確認しておきたいポイントです。
- 定期点検の頻度や点検項目
- アフターサービスの内容と期間
- トラブル発生時の対応スピード
- 保証の範囲と条件
どのようなアフターサービスが用意されているかを事前に把握しておけば長く安心して暮らせる家づくりができるでしょう。
まとめ
ローコスト住宅は、価格を抑えつつマイホームを実現できる魅力的な選択肢です。ただし、設備や性能、サポート体制での制約がある場合もあるため、デメリットもしっかり理解した上での判断が大切です。
予算に合った家づくりができるかどうかを見極めるためにも、複数の住宅メーカーを比較することはとても大切です。自分たちに本当に合った住まいを見つけるための大きなヒントになります。
「安さ」に惑わされず「納得感のある家づくり」を目指して家族にとって心地よい住まいを見つけてくださいね。
この記事の担当:

豊栄建設家づくり編集部
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