「高気密・高断熱の家を建てるなら、換気システムが重要らしいけど、種類が多くてよくわからない…」
「ハウスメーカーから第一種換気を勧められたけど、本当にうちに必要なの?」
新築の家づくりを進める中で、このような疑問をお持ちではないでしょうか。特に「第一種換気」は、性能が高い一方でコストもかかるため、採用すべきか悩む方が多い設備です。
この記事では、住宅の換気システムに関する専門知識を持つプロの視点から、第一種換気について徹底解説します。第三種換気との違いや、気になる費用、メリット・デメリットを分かりやすく比較し、あなたの家づくりにおける後悔のない選択をサポートします。
この記事を読めば、ご自身のライフスタイルや予算に最適な換気システムが何なのか、きっと見えてくるはずです。
この記事の目次
換気システムの種類と違いを比較
現在の住宅には、建築基準法によって24時間換気システムの設置が義務付けられています。これは、シックハウス症候群の原因となる化学物質などを排出し、常に新鮮な空気を取り入れるための重要な設備です。
この24時間換気システムには、主に「第一種」「第二種」「第三種」の3つの種類があります。それぞれの仕組みと特徴を理解することが、最適な換気システム選びの第一歩です。
第一種換気:機械で給排気・熱交換
第一種換気とは、給気(外の空気を取り込む)と排気(中の空気を外に出す)の両方を機械(ファン)で行う換気システムです。最大の特徴は、多くの製品に「熱交換」機能が搭載されている点です。
熱交換機能があると、排気する室内の空気から熱(冬は暖かさ、夏は涼しさ)を回収し、給気する外の空気にその熱を移してから室内に取り込みます。これにより、冷暖房のエネルギーロスを大幅に抑え、快適な室温を保ちながら換気ができるのが大きなメリットです。
第二種換気:機械で給気・自然に排気
第二種換気とは、給気を機械(ファン)で行い、排気は排気口から自然に行うシステムです。室内の気圧が外よりも高くなる「正圧」状態になるため、ドアや窓を開けても外から汚れた空気やホコリが入りにくいのが特徴です。
この特性から、手術室や工場のクリーンルームなど、特に清浄な環境が求められる場所で採用されることが多く、一般の住宅で使われることは稀です。
第三種換気:自然に給気・機械で排気
第三種換気とは、排気のみを機械(ファン)で行い、給気は壁に設けられた給気口から自然に行うシステムです。多くの住宅で標準的に採用されている最もポピュラーな換気方式です。
仕組みがシンプルなため、初期費用やメンテナンスコストを安く抑えられるのが最大のメリットです。一方で、外の空気をそのまま取り込むため、冬は冷たい空気、夏は熱い空気が直接入ってきてしまい、冷暖房の効率が下がる可能性があります。
換気方式別の特徴比較一覧表
ここまで解説した3つの換気方式の特徴を一覧表にまとめました。それぞれの違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | 第一種換気 | 第二種換気 | 第三種換気 |
|---|---|---|---|
| 換気の仕組み | 機械給気・機械排気 | 機械給気・自然排気 | 自然給気・機械排気 |
| 熱交換機能 | あり(主流) | なし | なし |
| 空気の質 | ◎(フィルターで浄化) | ◯(給気時に浄化) | △(外気が直接入る) |
| 省エネ性 | ◎(熱交換でロスが少ない) | △ | △ |
| 初期費用 | 高い | やや高い | 安い |
| ランニングコスト | やや高い | やや高い | 安い |
| 主な採用場所 | 高気密・高断熱住宅 | クリーンルーム、病院 | 一般住宅 |
第一種換気のメリット・デメリット
第一種換気は高性能な分、メリットとデメリットが明確です。両方をしっかり理解した上で、採用を検討しましょう。
メリット:熱交換で冷暖房費を削減
第一種換気の最大のメリットは、熱交換機能によって室内の快適な温度を保ちながら換気ができることです。
- 冬の場合
暖かい室内の空気を排気する際にその熱を回収し、冷たい外気を暖めてから室内に取り込みます。 - 夏の場合
涼しい室内の空気を排気する際にその冷たさを回収し、暑い外気を冷やしてから室内に取り込みます。
この仕組みにより、冷暖房の負荷を大幅に軽減でき、電気代の節約につながります。製品によっては、熱交換によって回収できる熱の割合(熱交換率)が80%を超えるものもあり、省エネ性能を重視する方には非常に魅力的です。
メリット:花粉やPM2.5の侵入を防ぐ
第一種換気は、給気の際に高性能なフィルターを通すため、外気に含まれる花粉やホコリ、PM2.5といった有害物質を大幅にカットして、清浄な空気を室内に取り込むことができます。
花粉症やアレルギーをお持ちの方、小さなお子様がいるご家庭にとっては、一年を通して健康で快適な室内環境を維持できる大きな安心材料となります。
デメリット:初期費用と電気代が高い
高性能な第一種換気は、シンプルな第三種換気と比較して導入にかかる初期費用が高額になる傾向があります。また、給気と排気の両方をファンで動かすため、消費電力が大きくなり、月々の電気代も第三種換気より高くなります。
ただし、前述の通り熱交換による冷暖房費の削減効果があるため、トータルの光熱費で考えると、必ずしも高くなるとは限りません。住宅の断熱性能やライフスタイルによって効果は変わるため、ハウスメーカーなどと光熱費のシミュレーションをしてみるのがおすすめです。
デメリット:定期的な清掃とフィルター交換
第一種換気システムの性能を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。これを怠ると、換気効率が落ちたり、カビや異音の原因になったりします。
- フィルター清掃
給気口・排気口のフィルターは、数ヶ月に1回程度の清掃が必要です。 - フィルター交換
本体内部の熱交換素子や高性能フィルターは、製品によりますが1年~数年に1回の交換が必要で、交換費用もかかります。
メンテナンスの手間や費用を負担に感じる可能性がある点は、事前に理解しておくべき重要なポイントです。
第一種換気の費用相場【初期・ランニングコスト】
第一種換気を導入する際に、具体的にどのくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。
導入にかかる初期費用の目安:50万円~
第一種換気システムの導入にかかる初期費用は、ダクト式かダクトレス式か、また建物の規模によって大きく変動しますが、一般的には約50万円~150万円程度が相場です。
シンプルな第三種換気の初期費用が10万円~30万円程度であることと比較すると、高額であることがわかります。この費用には、換気システム本体の価格と設置工事費が含まれます。
月々の電気代:500円~1,500円程度
第一種換気システムの電気代は、製品の消費電力や運転モードによって異なりますが、月々500円~1,500円程度が目安です。
一方、第三種換気(主にトイレや浴室の換気扇)の電気代は月々100円~300円程度です。第一種換気は電気代が高くなりますが、先述の通り、熱交換による冷暖房費の削減効果を考慮することが重要です。
メンテナンス費用:フィルター交換費
メンテナンス費用として定期的に発生するのがフィルターの交換費用です。
- 高性能フィルター
1枚あたり5,000円~15,000円程度が相場で、交換頻度は1年~2年に1回が目安です。 - 熱交換素子
製品によっては5年~10年での交換が推奨される場合があり、費用は数万円かかることもあります。
これらのランニングコストも考慮して、長期的な資金計画を立てましょう。
第一種換気の種類【ダクト式・ダクトレス式】
第一種換気システムは、配管(ダクト)を使うかどうかで「ダクト式」と「ダクトレス式」の2種類に大別されます。それぞれに特徴があるため、ご自宅の状況に合わせて選びましょう。
ダクト式の特徴とメリット・デメリット
ダクト式とは、換気ユニット本体を1台設置し、そこから各部屋へダクトを伸ばして家全体の換気を行う方式です。天井裏や壁の中にダクトを配管するため、主に新築時に採用されます。
- メリット
- 1台のユニットで家全体の換気を集中管理できる。
- 各部屋に換気扇を設置しないため、壁がスッキリする。
- 運転音が比較的静か。
- デメリット
- ダクトの配管工事が必要で、初期費用が高額になりやすい。
- ダクト内部の清掃が難しく、汚れが溜まると空気の質が低下する恐れがある。
ダクトレス式の特徴とメリット・デメリット
ダクトレス式とは、ダクトを使わず、各部屋の壁に直接換気ユニットを設置する方式です。給気と排気を1台で行うタイプや、給気用と排気用をペアで設置するタイプがあります。
- メリット
- ダクト工事が不要なため、初期費用を抑えやすく、リフォームでも導入しやすい。
- ユニットごとにフィルター清掃や交換ができるため、メンテナンスが容易。
- デメリット
- 換気したい部屋の数だけユニットの設置が必要。
- 壁に設置するため、運転音が気になる場合がある。
- 外壁に面していない部屋には設置が難しい。
ダクト式とダクトレス式の選び方
どちらの方式が良いかは、建物の状況や何を重視するかによって異なります。
- 新築で、家全体の空気を効率よく管理したい場合
→ ダクト式がおすすめです。 - リフォームで導入したい、または初期費用やメンテナンスの手間を抑えたい場合
→ ダクトレス式が有力な選択肢になります。
設計の自由度が高い新築の場合は、両方のメリット・デメリットを比較し、間取りや予算に合わせてハウスメーカーや工務店と相談して決めましょう。
第一種換気に関するよくある質問
最後に、第一種換気の導入を検討する際によく寄せられる疑問にお答えします。
フィルターの掃除は大変?頻度は?
A. 多くの製品で、フィルター掃除は比較的簡単に行えます。
給気口や排気口のフィルターは、カバーを外して掃除機でホコリを吸い取ったり、水洗いしたりするのが一般的です。頻度は2~3ヶ月に1回が目安ですが、汚れが気になったらその都度清掃するのがおすすめです。本体内部のフィルターは製品によって異なりますが、年に1回程度の清掃や交換が必要になります。
運転音はうるさくない?
A. 基本的に静かですが、設置場所によっては音が気になる可能性もあります。
最近の製品は静音設計が進んでおり、運転音は「弱」運転時で20~30dB(デシベル)程度と、図書館の中や深夜の郊外と同レベルの静かさです。ただし、寝室の枕元近くに給気口や換気ユニットがあると、わずかな音でも気になる場合があります。設計段階で、ベッドの位置と給気口の場所を考慮してもらうことが重要です。
カビや結露は発生しやすい?
A. 適切に運転・メンテナンスしていれば、カビや結露のリスクは低減できます。
第一種換気は家全体の空気を常に入れ替えるため、湿気がこもりにくく、むしろ結露の発生を抑制する効果が期待できます。ただし、フィルターの目詰まりや長期間の電源オフは、換気能力の低下を招き、カビや結露の原因になりかねません。24時間運転を基本とし、定期的なメンテナンスを心掛けましょう。
後付けはできる?費用は?
A. ダクトレス式であれば後付けは可能ですが、ダクト式は大規模な工事が必要になります。
ダクトレス式は壁に穴を開けてユニットを設置するため、リフォームでの後付けが比較的容易です。費用は1台あたり15万円~30万円程度が目安です。一方、ダクト式を後付けする場合は、天井や壁を一度剥がして配管工事を行う必要があり、費用も高額になるため現実的ではありません。
まとめ
今回は、第一種換気システムについて、その仕組みからメリット・デメリット、費用、メーカー比較まで詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 第一種換気
機械で給排気を行い、「熱交換」によって省エネで快適な室内環境を実現する高性能なシステム。 - メリット
冷暖房費の削減効果が高く、フィルターによって花粉やPM2.5の侵入を防げる。 - デメリット
初期費用やランニングコストが第三種換気より高く、定期的なメンテナンスが必須。 - 費用
初期費用は約50万円~、月々の電気代は500円~1,500円程度が目安。 - 選び方
新築なら「ダクト式」、リフォームやコストを抑えたいなら「ダクトレス式」も選択肢に。
第一種換気は、初期コストをかけてでも、一年を通して快適で健康的な空気環境と、高い省エネ性能を手に入れたいという方に最適な換気システムです。
一方で、初期費用を抑えたい方や、メンテナンスの手間をなるべく減らしたい方にとっては、第三種換気も合理的な選択肢となります。
どちらの換気システムがご自身の家づくりに合っているか、この記事を参考に、ぜひご家族やハウスメーカー、工務店の担当者とじっくり話し合ってみてください。あなたの理想の家づくりが成功することを心から応援しています。
