「家の換気システム、第一種と第三種、どちらを選べばいいの?」
注文住宅や新築の家づくりを進める中で、多くの方がこの疑問に突き当たります。ハウスメーカーから説明は受けたものの、専門用語が多くて違いがよく分からない、という方も多いのではないでしょうか。
換気システムは、一度設置すると簡単には変更できない重要な設備です。コストや性能、日々の暮らしの快適性を大きく左右するため、後悔のない選択をしたいですよね。
この記事では、住宅の換気システムについて専門知識を持つプロの視点から、特に「第三種換気」に焦点を当て、多くの人が比較検討する「第一種換気」との違いを徹底的に解説します。
この記事を読めば、それぞれの仕組みからメリット・デメリット、気になるコストや「冬は寒い?」といった疑問まで、すべてがクリアになります。あなたのご家庭に最適な換気システムを見つけるための、確かなヒントがここにあります。
この記事の目次
第一種・第三種換気の違いを一覧比較
まずは、これから家を建てる方が最も気になる「第一種換気」と「第三種換気」の主な違いを一覧表で見てみましょう。どちらの換気システムがご自身のライフスタイルや予算に合っているか、大まかなイメージを掴んでください。
| 比較項目 | 第一種換気 | 第三種換気 |
|---|---|---|
| 仕組み | 機械で給気・機械で排気 | 自然に給気・機械で排気 |
| 熱交換 | あり(省エネ性が高い) | なし(外気の影響を受けやすい) |
| 初期費用 | 高い(約50万~150万円) | 安い(約15万~40万円) |
| 電気代 | やや高い(月額 約500~1,500円) | 安い(月額 約100~500円) |
| メンテナンス | 複雑(フィルターが多く、交換費用も高め) | 簡単(給気口と排気ファンの掃除が中心) |
| 快適性 | ◎(室温が保たれ、冬も夏も快適) | △(冬は寒く、夏は暑い空気が入る) |
| おすすめな人 | 快適性・省エネ性を重視する人 | 初期費用を抑えたい人 |
仕組みと熱交換の有無
最大の違いは、給気の方法と「熱交換」機能の有無です。
- 第一種換気: 給気と排気の両方をファン(機械)で行います。その際、排気する空気の熱を回収し、給気する空気に移す熱交換という仕組みを持っています。
- 第三種換気: 排気のみをファン(機械)で行い、給気は壁に設置された給気口から自然に行います。熱交換機能はありません。
この違いが、後述するコストや快適性に大きく影響します。
初期費用とランニングコスト(電気代)
コスト面では、第三種換気が圧倒的に有利です。
- 初期費用: 第三種換気は構造がシンプルなため、15万~40万円程度が目安です。一方、第一種換気は熱交換器や複数のファンが必要なため、50万~150万円と高額になります。
- ランニングコスト(電気代): 第三種換気は排気ファンのみを動かすため、月々の電気代は約100~500円程度です。第一種換気は給排気両方のファンを動かすため、約500~1,500円程度かかります。
メンテナンスの手間と費用
メンテナンスの容易さも、第三種換気に軍配が上がります。
- 第三種換気: 掃除するのは、各部屋の壁にある給気口のフィルターと、天井などにある排気ファンのフィルターが中心です。構造が単純なため、ご自身で簡単に手入れができます。
- 第一種換気: 本体内部にある熱交換素子や給排気フィルターなど、掃除すべき箇所が多く複雑です。フィルターの交換費用も第三種換気より高くなる傾向があります。
快適性(冬の寒さ・静音性)
室内の快適性を最優先するなら、第一種換気が優れています。
- 冬の寒さ・夏の暑さ: 第三種換気は外気をそのまま取り込むため、冬は冷たい空気が、夏は暑い空気が直接入ってきます。一方、第一種換気は熱交換によって外気を室温に近づけてから取り込むため、室温の変化が少なく快適です。
- 静音性: 製品によりますが、第三種換気は給気口が居室の壁にあるため、屋外の音が入りやすい場合があります。第一種換気はダクトを通して給気されるため、比較的静かです。
おすすめな人・住宅のタイプ
- 第三種換気がおすすめな人: 初期費用やランニングコストをできるだけ抑えたい方、メンテナンスの手間をかけたくない方に向いています。
- 第一種換気がおすすめな人: 一年を通して快適な室温で過ごしたい方、光熱費を長期的に見て節約したい(省エネ性を重視する)方、高気密・高断熱の住宅性能を最大限に活かしたい方におすすめです。
第三種換気とは?仕組みとメリット・デメリット
ここからは、第三種換気システムについて、さらに詳しく見ていきましょう。
機械排気・自然給気の仕組み
第三種換気とは、排気はファンなどの機械で行い、給気は給気口から自然に行う換気方式です。
室内の空気をファンで強制的に外へ排出すると、室内が負圧(外より気圧が低い状態)になります。その気圧差を利用して、壁に設けられた給気口から新鮮な外気が自然に入ってくる、という非常にシンプルな仕組みです。主にトイレや浴室の換気扇がこの仕組みにあたります。
メリット:導入コストが安く構造が単純
第三種換気の最大の魅力は、そのシンプルさにあります。
- 導入コストが安い
シンプルな構造のため、第一種換気に比べて初期費用を大幅に抑えることができます。予算に限りがある場合に大きなメリットとなります。 - ランニングコスト(電気代)が安い
動かすファンが排気用のみなので、消費電力が少なく、月々の電気代も安価です。 - メンテナンスが簡単
複雑な機械がないため、故障のリスクが低く、日々の手入れも簡単です。基本的には給気口フィルターと排気ファンの掃除だけで済みます。
デメリット:外気の影響で冬は寒い
シンプルさゆえのデメリットも存在します。
- 外気の影響を受けやすい(冬は寒い・夏は暑い)
熱交換機能がないため、冬は冷たい外気が、夏は蒸し暑い外気がそのまま室内に入ってきます。特に冬場は、給気口の近くにいると冷気を感じやすく、「寒い」と感じる原因になります。 - 気密性の低い住宅では計画的な換気が難しい
家の隙間が多い(気密性が低い)と、給気口以外からも空気が入ってきてしまい、設計通りの空気の流れが作れない可能性があります。
第一種換気とは?仕組みとメリット・デメリット
次に、比較対象となる第一種換気システムの特徴を見ていきましょう。
機械給排気・熱交換の仕組み
第一種換気とは、給気と排気の両方をファンなどの機械で行う換気方式です。
最大の特徴は「熱交換」機能を持つことです。熱交換とは、換気の際に捨てられてしまう室内の空気の「熱」を回収し、新しく取り込む外気にその熱を移してから室内に供給する技術です。
例えば、冬に暖房で暖められた20℃の空気を排気する際、その熱を回収し、外の0℃の冷たい空気を16℃程度まで暖めてから給気します。これにより、冷暖房の負荷を大幅に軽減できます。
メリット:室温を保ちやすく省エネ
第一種換気は、高い性能がもたらすメリットが魅力です。
- 快適な室温を維持できる
熱交換によって外気を室温に近づけてから取り込むため、冬でも冷たい空気が入ってくる不快感がありません。一年を通して快適な室内環境を保ちやすくなります。 - 省エネ性が高く光熱費を削減できる
換気による熱の損失が少ないため、冷暖房の効率が上がり、結果的に月々の光熱費を抑えることにつながります。 - 外気を浄化して取り込める
高性能なフィルターを搭載している機種が多く、花粉やPM2.5などの有害物質を除去してから給気できるため、きれいな空気環境を保てます。
デメリット:コストが高くメンテナンスが複雑
高性能である反面、コストやメンテナンス面でのデメリットがあります。
- 導入コスト(初期費用)が高い
熱交換器や複数のファン、ダクト配管などが必要なため、第三種換気と比べて初期費用が高額になります。 - メンテナンスが複雑で費用もかかる
給気・排気双方のフィルターや、熱交換素子の定期的な清掃・交換が必要です。構造が複雑なため、専門業者によるメンテナンスが必要になる場合もあります。 - 設置スペースが必要
換気システムの本体を設置するためのスペース(天井裏やクローゼット内など)が必要になります。
その他の換気システムの種類
住宅の換気システムには、第一種・第三種以外にも種類があります。知識として知っておきましょう。
第二種換気システムの仕組みと主な用途
第二種換気とは、給気を機械で行い、排気は排気口から自然に行う換気方式です。
室内が正圧(外より気圧が高い状態)になるため、ドアや窓を開けても外から汚れた空気が入り込みにくいのが特徴です。この特性を活かし、手術室やクリーンルーム、食品工場の製造ラインなど、特に清浄な環境が求められる場所で採用されます。一般の住宅で使われることはほとんどありません。
法律で義務化された24時間換気システム
そもそも、なぜ住宅に換気システムが必要なのでしょうか。
それは、2003年に改正された建築基準法により、すべての住宅に「24時間換気システム」の設置が義務付けられたからです。背景には、建材などから発生する化学物質によって健康被害が起こる「シックハウス症候群」が社会問題化したことがあります。
現代の住宅は気密性が高まっているため、意識的に換気を行わないと汚れた空気が室内に溜まり続けてしまいます。24時間換気システムとは、窓を開けなくても家全体の空気を2時間で1回入れ替えることができる設備の総称であり、第一種換気や第三種換気は、その具体的な方式の一つなのです。
第三種換気に関するよくある質問
ここでは、第三種換気システムを検討する際に多くの方が抱く疑問にお答えします。
「第三種換気は寒い」は本当?対策方法
「はい、対策をしないと寒さを感じやすい」のが事実です。
第三種換気は外の冷たい空気をそのまま取り込むため、特に冬場は給気口の近くにいるとヒヤッとした空気の流れを感じることがあります。しかし、これには対策方法があります。
- 高気密・高断熱住宅と組み合わせる
家全体の断熱性・気密性が高ければ、入ってきた冷気がすぐに暖められ、室温への影響を最小限に抑えられます。第三種換気のデメリットは、住宅本体の性能でカバーすることが可能です。 - 寒冷地仕様の給気口を選ぶ
中には、取り込む空気を少しだけ温めるヒーター付きの給気口や、空気の吹き出し方向を調整できる製品もあります。 - 給気口の設置場所を工夫する
人が長時間過ごすソファの上やベッドの枕元などを避けて給気口を設置するよう、設計段階で相談することも重要です。
第一種換気との電気代の差額
月々の電気代の差額は、数百円から1,000円程度です。
- 第三種換気: 月額 約100~500円
- 第一種換気: 月額 約500~1,500円
第三種換気の方が電気代は安いですが、第一種換気には冷暖房費を削減する省エネ効果があります。そのため、「換気扇の電気代+冷暖房費」というトータルの光熱費で比較検討することが大切です。
フィルター掃除などメンテナンスの手間
メンテナンスの手間は、第三種換気の方が圧倒的に楽です。
第三種換気の場合、ご自身で行うメンテナンスは主に以下の2点です。
- 給気口フィルターの清掃・交換: 各部屋の壁にある給気口のカバーを外し、フィルターのホコリを掃除機で吸ったり、水洗いしたりします。頻度は2~3ヶ月に1回が目安です。
- 排気ファンの清掃: 天井などにある排気口のカバーとファンを外し、汚れを拭き取ります。頻度は年に1~2回が目安です。
一方、第一種換気はこれらに加えて、本体内部にある熱交換素子や複数のフィルターの清掃が必要になり、手間がかかります。
花粉やPM2.5は除去できるか
「給気口に高性能フィルターを付ければ除去可能」です。
標準のフィルターは虫や大きなホコリの侵入を防ぐ程度のものが多いですが、オプションで花粉やPM2.5に対応した高性能フィルターに交換できる製品がほとんどです。
ただし、第一種換気のように給気を一括管理しているシステムとは異なり、各部屋の給気口ごとにフィルターを交換する必要があるため、その分のコストと手間はかかります。花粉症などで悩んでいる方は、フィルターの性能と交換のしやすさも確認しましょう。
あなたに合う換気システムの選び方
ここまで解説してきた内容を踏まえ、あなたがどちらの換気システムを選ぶべきか、最終的な判断基準をまとめました。
コストを最優先するなら「第三種換気」
- とにかく初期費用を抑えたい
- 月々の電気代も安くしたい
- メンテナンスは自分で簡単に済ませたい
このようなコストパフォーマンスと手軽さを重視する方には、第三種換気がおすすめです。冬場の寒さなどデメリットはありますが、住宅の断熱性能を高めたり、給気口の工夫をしたりすることで、快適性を向上させることは十分に可能です。
快適性と省エネ性を求めるなら「第一種換気」
- 一年中、室温を快適に保ちたい
- 初期費用はかかっても、長期的な光熱費を抑えたい
- 花粉やPM2.5を気にせず、きれいな空気の中で暮らしたい
このような住み心地の良さや健康面、省エネ性を重視する方には、第一種換気が最適な選択肢となるでしょう。高気密・高断熱住宅の性能を最大限に引き出し、より質の高い暮らしを実現できます。
ハウスメーカーごとの標準仕様と特徴
換気システムは、ハウスメーカーや工務店によって標準仕様が異なります。
- ローコスト系のハウスメーカー: 第三種換気を標準仕様としていることが多いです。コストを抑えることを重視しているため、理にかなった選択と言えます。
- 高気密・高断熱を強みとするハウスメーカー: 第一種換気を標準仕様または推奨していることが多いです。住宅性能を最大限に活かし、快適な住環境を提供することを重視しています。
ただし、多くの場合、標準仕様が第三種換気でもオプションで第一種換気に変更できますし、その逆も可能です。まずは検討しているハウスメーカーの標準仕様を確認し、その上で「自分たちの暮らしにはどちらが合っているか」という視点で相談してみましょう。
まとめ
今回は、住宅の換気システム、特に「第三種換気」と「第一種換気」の違いについて詳しく解説しました。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 第三種換気: コストが安く、メンテナンスが楽。ただし、外気の影響を受けやすく冬は寒い。
- 第一種換気: 快適性と省エネ性が高い。ただし、コストが高く、メンテナンスに手間がかかる。
- 選択の基準: コスト重視なら第三種、快適性・省エネ性重視なら第一種が基本。
- 24時間換気は法律上の義務: どちらの方式を選ぶにせよ、健康な暮らしのために不可欠な設備。
換気システムは、家の快適性やランニングコストを左右する重要な要素です。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の予算やライフスタイル、そして「どんな暮らしをしたいか」という価値観に照らし合わせて、後悔のない選択をしてください。
