「キッチン周りが物であふれてしまう…」「まとめ買いした食品の置き場所に困る…」
注文住宅を考え始めたり、キッチンのリフォームを検討したりする中で、こんな悩みを抱えていませんか?その解決策として注目されているのが「パントリー」です。
パントリーという言葉は聞いたことがあっても、「具体的にどんなもの?」「うちにも本当に必要?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、パントリーの基本的な知識から、設置するメリット・デメリット、後悔しないための間取りの考え方、そして使いやすさを格段にアップさせる収納アイデアまで、専門家の視点で分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたの家に最適なパントリーの形が見つかり、理想のキッチンづくりへの第一歩を踏み出せるはずです。
この記事の目次
パントリーとは?キッチンの便利な食品庫

まずは「パントリーとは何か」という基本から見ていきましょう。パントリーは、あなたのキッチンをより機能的で美しい空間に変えてくれる、頼もしい存在です。
パントリーの基本的な役割と意味
パントリーとは、キッチンに隣接または内部に設けられる、食品や飲料、調味料のストック、普段あまり使わない調理器具などを保管しておくための収納スペースのことです。その主な役割は、キッチンの収納力を補い、食料品などを一元管理することにあります。
パントリーがあることで、キッチン本体の収納スペースにゆとりが生まれ、調理スペースを広々と使えるようになります。また、ストック品をまとめて管理できるため、在庫の把握がしやすく、無駄な買い物を減らす効果も期待できます。
食品庫や納戸との違い
パントリーと似た言葉に「食品庫」や「納戸」があります。それぞれの違いを理解しておきましょう。
- 食品庫
パントリーとほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。どちらも食品をストックする場所を指しますが、パントリーの方が飲料や調理器具、日用品なども含めた、より広い範囲のものを収納するスペースというニュアンスで使われる傾向があります。 - 納戸(なんど)
納戸は、建築基準法上の「居室」の条件(採光や換気など)を満たさない部屋のことで、「サービスルーム」とも呼ばれます。衣類や季節の家具、趣味の道具など、家全体の様々なものを収納する多目的なスペースです。
パントリーはキッチンでの作業効率を高めることに特化した収納であるのに対し、納戸は家全体の収納を担うスペースであるという点が大きな違いです。
パントリーは必要か?メリット・デメリット
パントリーは非常に便利ですが、誰にでも必ず必要というわけではありません。設置してから「思っていたのと違った…」と後悔しないために、メリットとデメリットをしっかり比較検討しましょう。
メリット:まとめ買いで家事効率アップ
パントリーの最大のメリットは、その圧倒的な収納力です。週末にまとめ買いした食品や、特売で買った飲料の箱、コストコなどで購入した大容量の商品も、余裕をもって収納できます。
- 買い物の頻度が減る
ストックがたくさん置けるため、頻繁に買い物に行く手間が省け、時間と労力を節約できます。 - 在庫管理がしやすい
どこに何があるか一目で把握できるため、二重買いや賞味期限切れを防ぎやすくなります。
メリット:キッチンがすっきり片付く
パントリーがあれば、生活感の出やすいものを隠して収納できます。
例えば、パッケージが雑多に見えがちなレトルト食品やお菓子、買い置きのペットボトル、ホットプレートやかき氷機といった季節の調理家電などをパントリーに収めることで、キッチンカウンターやカップボードの上はいつもすっきり。急な来客時でも慌てることなく、美しいキッチン空間を保つことができます。
メリット:災害時の備蓄スペース確保
近年、防災意識の高まりから、非常食や飲料水を備蓄する家庭が増えています。パントリーは、災害時のための備蓄品を保管する場所としても最適です。
普段使うものを少し多めにストックし、使った分だけ買い足していく「ローリングストック法」を実践するのにも十分なスペースを確保できます。いざという時の安心につながる、重要な役割を果たしてくれるでしょう。
デメリット:設置スペースと建築コスト
当然ながら、パントリーを設けるには、その分のスペースが必要になります。特にウォークインタイプのような広いパントリーを希望する場合、他の居住スペース(LDKや他の部屋)が狭くなる可能性があります。
また、壁や棚、場合によっては扉や照明、換気扇などを追加で設置するため、建築コストがその分増加することも考慮しておく必要があります。
デメリット:湿気・カビ・害虫対策の必要性
食品を保管するパントリーにとって、湿気は大敵です。特に窓のないパントリーは空気がこもりやすく、湿気によるカビや、食品の匂いにつられた害虫が発生するリスクがあります。
計画段階で換気扇や小さな窓を設置したり、除湿剤を置いたりするなど、衛生管理を怠らないように注意が必要です。
デメリット:動線が悪いと使わなくなる
「せっかく作ったのに、ほとんど使っていない…」という後悔で最も多いのが、動線の問題です。キッチンから遠い場所や、使いにくい位置にパントリーを作ってしまうと、物を取りに行ったりしまったりするのが面倒になり、次第に使われない「開かずの間」になってしまうことがあります。
パントリーを最大限に活用するためには、間取り計画が非常に重要です。
パントリーの種類と特徴
パントリーにはいくつかのタイプがあり、それぞれに特徴があります。家の広さやライフスタイルに合わせて最適なものを選びましょう。
大容量のウォークインタイプ

人が中に入って作業できる、小さな部屋のようなタイプです。収納力が最も高く、たくさんの食品や調理家電をストックしたい家庭に最適です。
棚のレイアウトをL字型やU字型にすることで、スペースを無駄なく活用できます。収納だけでなく、中で家計簿をつけたり、レシピを考えたりする小さなワークスペースとして活用するアイデアもあります。
家事動線が便利なウォークスルータイプ

入り口が2か所あり、通り抜けができるタイプのパントリーです。例えば、「玄関 → ウォークスルーパントリー → キッチン」という動線を作れば、買い物から帰ってきてすぐに食品を収納でき、非常に効率的です。
家事動線を劇的に改善できる可能性がある一方で、通路としてのスペースが必要になるため、壁面が少なくなり、ウォークインタイプに比べて収納量はやや減る傾向があります。
省スペースな壁面・キャビネットタイプ

キッチンの壁の一部を利用して棚を設けたり、背の高い収納棚(キャビネット)を設置したりするタイプです。I型(壁付け)パントリーとも呼ばれます。
独立した部屋を必要としないため、限られたスペースでも設置しやすく、リフォームでも取り入れやすいのが魅力です。扉を付ければ中身を隠してすっきりと見せられ、扉を付けずに「見せる収納」として楽しむこともできます。
後悔しないパントリーの間取りアイデア
パントリーを成功させる鍵は「間取り」にあります。使いやすさを左右する5つのポイントを押さえて、後悔のない計画を立てましょう。
配置場所:キッチン横・背面が基本
パントリーの配置場所は、キッチンからのアクセスしやすさが最優先です。調理中にサッと調味料を取り出したり、食器をしまったりできるよう、キッチン横やキッチンの真後ろ(背面)に配置するのが基本です。
動線:玄関や勝手口からのアクセス
「買い物からの帰宅 → 収納」という一連の流れをスムーズにする動線を意識しましょう。玄関や、ゴミ出しにも便利な勝手口からパントリーに直接アクセスできる間取りは、重い米や飲料を運ぶ負担を大きく軽減してくれます。
広さの目安:1畳・2畳・3畳以上
パントリーの広さは、収納したいものの量や使い方によって決まります。
- 1畳
約1.65㎡のスペース。食品や日用品のストック管理が主な目的であれば、1畳でも十分な収納量を確保できます。棚をコの字型に配置すると効率的です。 - 2畳
約3.3㎡のスペース。食品ストックに加え、ホットプレートやミキサーなどの調理家電、あるいは小型の冷凍庫(セカンド冷凍庫)などを置く余裕も生まれます。 - 3畳以上
かなり広いスペースを確保できます。収納だけでなく、作業台を置いて家事スペースとして活用したり、趣味のものを置いたりと、多目的に使える空間になります。
棚の設計:可動棚と奥行の最適化
棚は、収納するものに合わせて高さを自由に変えられる「可動棚」にすることが絶対におすすめです。これにより、背の高い瓶やペットボトル、家電など、様々なサイズのものを無駄なく収納できます。
棚の奥行きは、30cm~45cm程度が一般的です。奥行きが深すぎると奥のものが取り出しにくくなり、賞味期限切れの原因にもなります。何を置きたいかに合わせて最適な奥行きを検討しましょう。
換気と採光:窓や換気扇の設置
食品を扱う空間の衛生を保つため、換気対策は必須です。小さな窓を設けて自然換気と採光を確保するか、換気扇を設置することを強くおすすめします。
また、棚の奥まで見やすいように照明を設置したり、ミキサーなどを使う可能性を考えてコンセントを1〜2口設けておくと、将来的に非常に便利です。
パントリーに入れるものと収納術
「パントリーを作ったはいいけど、何を入れたらいいの?」「どうすれば使いやすくなるの?」という疑問にお答えします。基本的な収納物リストと、すぐに真似できる収納アイデアをご紹介します。
パントリーに入れるものリスト
パントリーはキッチン周りのあらゆるものを収納できます。何をどこに置くか、大まかなゾーニングを考えておくと整理しやすくなります。
食品・飲料・調味料のストック
- 常温保存できる野菜
じゃがいも、玉ねぎ、にんにくなど - 缶詰・瓶詰
ツナ缶、トマト缶、ジャムなど - 乾物・粉類
パスタ、海苔、小麦粉、砂糖など - レトルト食品・インスタント食品
カレー、スープ、カップ麺など - 飲料
水、お茶、ジュース、お酒の箱など - 調味料
醤油、みりん、油、スパイス類のストック
調理器具・ホットプレート等のキッチン家電
- 使用頻度の低い調理器具
土鍋、カセットコンロ、大きな鍋など - 季節の家電
かき氷機、餅つき機など - たまに使うキッチン家電
ホットプレート、たこ焼き器、ミキサー、ホームベーカリーなど
日用品・消耗品のストック
- キッチン消耗品
キッチンペーパー、ラップ、アルミホイル、ゴミ袋など - 掃除用品
洗剤、スポンジのストックなど - その他
ティッシュペーパー、トイレットペーパー、お弁当箱、水筒など
収納アイデア:収納ボックスで統一感を出す
ごちゃごちゃしがちなパントリーをすっきり見せる最も簡単な方法は、収納ボックスのデザインや色を統一することです。無印良品やニトリ、IKEAなどで手に入るシンプルなボックスで揃えるだけで、見た目に統一感が生まれ、整理された印象になります。
収納アイデア:ラベリングで見やすく管理
中身が見えない不透明なボックスを使う場合は、何が入っているか一目でわかるようにラベルを貼るのが鉄則です。「パスタ」「缶詰」「お菓子」など、カテゴリーごとにラベリングすることで、家族の誰もが目的のものをすぐに見つけられるようになります。
収納アイデア:ファイルボックスで立てる収納
書類整理に使うファイルボックスは、パントリー収納でも大活躍するアイテムです。フライパンや鍋の蓋、トレー、まな板などを立てて収納すれば、省スペースで取り出しやすくなります。また、レトルト食品の箱や乾麺の袋などを立てて並べるのにも便利です。
収納アイデア:おしゃれな見せる収納のコツ
あえて扉をつけないパントリーや、オープン棚で見せる収納を楽しみたい場合は、少し工夫が必要です。
- お気に入りの容器に移し替える
パスタやシリアル、粉類などをガラス製のキャニスターやホーロー容器に移し替えるだけで、カフェのようなおしゃれな雰囲気になります。 - カゴ素材を取り入れる
ラタンやワイヤーなど、素材感のあるカゴを使うと、温かみのあるナチュラルな印象になります。 - 色やパッケージでまとめる
見せるアイテムは、色数を抑えたり、パッケージデザインの美しいものを選んだりすると、雑多に見えず、洗練された空間を演出できます。
おしゃれなパントリー実例集
最後に、注文住宅で実現できるおしゃれなパントリーのアイデアをいくつかご紹介します。ぜひあなたの家づくりの参考にしてください。
実例:シンプルモダンなパントリー

白やグレーを基調とした空間に、ステンレスの棚板やモノトーンの収納ボックスを組み合わせたパントリー。生活感を徹底的に排除した、クリーンでスタイリッシュな印象です。照明にはダウンライトやスポットライトを使い、シャープな空間を演出します。
実例:ナチュラル・カフェ風パントリー

無垢材の棚板に、ラタンやシーグラスなどの天然素材のカゴを合わせた、温かみのあるパントリー。壁の一部にサブウェイタイルやアクセントクロスを貼るのも人気です。お気に入りの瓶に詰めたグラノーラやコーヒー豆を並べれば、まるでおしゃれなカフェのバックヤードのようになります。
実例:大容量で機能的なパントリー
2畳以上の広さを確保したウォークインパントリーに、床から天井までの可動棚をU字型に設置。食品ストックから家電、日用品まで、家中のあらゆるものを一元管理できる、まさに「家庭の倉庫」です。中央に小さな作業台を置けば、アイロンがけなどの家事スペースとしても活用できます。
実例:アーチ壁がおしゃれなパントリー
パントリーの入り口を四角い開口ではなく、柔らかな曲線を描くアーチ壁(R垂れ壁)にするだけで、空間のアクセントとなり、一気におしゃれな雰囲気になります。リビングやダイニングからパントリーの中が少し見える間取りの場合、このアーチ壁がインテリアの素敵なワンポイントとして映えます。
まとめ
今回は、キッチンの頼れる収納スペース「パントリー」について、その基本から後悔しないための間取りの考え方、具体的な収納術まで詳しく解説しました。
パントリーのポイントをもう一度おさらいしましょう。
- パントリーとは、食品や日用品をストックし、キッチンをすっきりさせるための収納スペース。
- メリットは「家事効率アップ」「片付いたキッチンの維持」「防災備蓄」、デメリットは「コストとスペース」「衛生管理」「動線の重要性」。
- 種類は「ウォークイン」「ウォークスルー」「壁面」の3タイプが主流。
- 間取りの鍵は「キッチンからの近さ」「玄関からの動線」「可動棚」「換気」。
- 収納術は「ボックスの統一」「ラベリング」「立てる収納」で使いやすさが格段にアップ。
パントリーは、ただの物置ではありません。あなたのライフスタイルに合わせて適切に計画することで、日々の家事を楽にし、暮らしを豊かにしてくれるパートナーとなり得ます。
この記事で得た知識をもとに、ぜひ建築家や工務店の担当者と相談しながら、あなたにとって最高のパントリーを実現してください。