初めての家づくり

換気の種類を徹底比較!第一種・第三種の違いと選び方

換気の種類を徹底比較!第一種・第三種の違いと選び方

「新しい家の換気システム、第一種と第三種があるけど、どっちがいいんだろう…?」
「初期費用は抑えたいけど、冬に寒いのは嫌だな…」

新築やリフォームを計画する中で、24時間換気システムの選択は、住まいの快適性や省エネ性能を左右する重要なポイントです。建築基準法により設置が義務付けられていますが、その種類や仕組みは複雑で、どれを選べば後悔しないのか悩んでしまいますよね。

この記事では、住宅に使われる換気システムの種類、特に主流である第一種換気第三種換気の違いを、専門知識を持つプロの視点から徹底的に比較・解説します。

それぞれの仕組みから、メリット・デメリット、費用、そしてあなたのライフスタイルに合った選び方まで、この記事を読めばすべてが分かります。理想の家づくりのために、最適な換気システムを見つけましょう。

換気システム3種類の一覧比較表

まずは、住宅で採用される主な換気システム「第一種」「第二種」「第三種」の3種類を、気になる項目別に比較してみましょう。ご自身の優先順位と照らし合わせながらご覧ください。

初期費用・ランニングコストの比較

比較項目第一種換気第二種換気第三種換気
初期費用高い(約50万~100万円以上)やや高い安い(約10万~30万円)
ランニングコスト(電気代)やや高い(熱交換なしの場合)
安い(熱交換ありの場合)
やや高い安い

省エネ性能・快適性の比較

比較項目第一種換気第二種換気第三種換気
省エネ性能高い(特に熱交換あり)低い低い
室温の快適性(冬)快適(特に熱交換あり)やや快適寒い場合がある
室温の快適性(夏)快適(特に熱交換あり)やや不快暑い場合がある

空気の清浄度・メンテナンス性の比較

比較項目第一種換気第二種換気第三種換気
空気の清浄度高い(高性能フィルター設置可)高い普通(フィルター性能による)
メンテナンス性手間がかかる(フィルター清掃・交換)手間がかかる簡単
結露の発生リスク低い高い低い

換気システムの種類と仕組み

比較表で大まかな違いを把握したところで、次にそれぞれの換気方式の「仕組み」を詳しく見ていきましょう。「給気(外気を取り込む)」と「排気(室内の空気を出す)」を機械で行うか、自然に行うかで3種類に分類されます。

第一種換気 給排気を機械で行う方式

第一種換気とは、給気と排気の両方を機械(ファン)で行う換気方式です。空気の出入りを機械で強制的にコントロールするため、最も計画的で安定した換気が可能になります。

  • 空気の流れ
    給気ファンが外の新鮮な空気を室内に取り込み、同時に排気ファンが室内の汚れた空気を外に排出します。
  • 特徴
    空気の流れを正確に制御できるのが最大の特徴です。後述する「熱交換換気システム」を組み合わせられるのも、この第一種換気だけです。高気密・高断熱住宅との相性が非常に良く、現在の高性能住宅で主流となりつつあります。

第二種換気 給気を機械、排気を自然に行う方式

第二種換気とは、給気のみを機械(ファン)で行い、排気は排気口などから自然に行う方式です。室内の気圧が外よりも高くなる「正圧」の状態になるのが特徴です。

  • 空気の流れ
    給気ファンが強制的に外気を取り込むことで、室内の空気圧が上昇し、その圧力で室内の空気が排気口から自然に押し出されます。
  • 特徴
    常に外から空気を取り込んでいるため、ドアや窓を開けた際に外から汚れた空気やホコリが侵入しにくいというメリットがあります。この特性から、クリーンルームや手術室、食品工場などで主に採用されており、一般の住宅で使われることは稀です。ただし、室内に湿気が溜まりやすく結露のリスクが高いというデメリットもあります。

第三種換気 給気を自然、排気を機械で行う方式

第三種換気とは、排気のみを機械(ファン)で行い、給気は壁に設けられた給気口などから自然に行う方式です。多くの住宅で採用されてきた、最もシンプルで一般的な換気方法です。

  • 空気の流れ
    トイレや浴室の換気扇が室内の空気を強制的に排出し、室内が負圧(外より気圧が低い状態)になることで、壁の給気口から外の新鮮な空気が自然に入ってきます。
  • 特徴
    仕組みがシンプルで、初期費用やランニングコストを安く抑えられるのが最大のメリットです。一方で、給気口から入ってくる外気は外の温度そのままなので、冬は冷たい空気、夏は暑い空気が直接入ってくるというデメリットがあります。

換気の種類別メリット・デメリット

それぞれの仕組みを理解した上で、メリットとデメリットを整理してみましょう。ご自身の家づくりで何を優先したいかを考えながら比較してみてください。

第一種換気の長所と短所

メリット

  • 安定した換気性能
    機械で給排気を行うため、天候や風の強さに左右されず、常に計画通りの安定した換気が可能です。
  • 高い省エネ効果(熱交換ありの場合)
    熱交換システムを導入すれば、外気の温度を室温に近づけてから取り込むため、冷暖房のロスが少なくなり、光熱費を大幅に削減できます。
  • 室内の快適性
    冬は冷たい空気が、夏は暑い空気が直接入ってこないため、一年を通して快適な室温を保ちやすくなります。
  • きれいな空気環境
    給気側に高性能なフィルターを設置できるため、花粉やPM2.5などの侵入を効果的に防ぐことができます。

デメリット

  • 高い初期費用
    給排気ともに機械設備が必要なため、第三種換気と比べて初期費用が数十万円単位で高くなります。
  • ランニングコスト
    給気と排気の両方でファンを動かすため、第三種換気よりも電気代がかかります。(ただし、熱交換による冷暖房費の削減効果を考慮すると、トータルでは安くなる場合が多いです。)
  • メンテナンスの手間
    給気フィルターや熱交換素子の定期的な清掃・交換が必要です。これを怠ると性能が低下したり、カビが発生したりする原因になります。

第二種換気の長所と短所

メリット

  • 汚染物質の侵入防止
    室内が正圧になるため、ドアの開閉時などに外部からホコリやチリが入り込みにくいです。
  • きれいな空気の給気
    給気側に高性能フィルターを設置すれば、きれいな空気だけを室内に取り込めます。

デメリット

  • 一般住宅には不向き
    特殊な環境で採用される方式であり、一般的な住宅での採用実績はほとんどありません。
  • 結露のリスクが高い
    室内の湿気が壁の中などに押し込まれ、壁内結露を引き起こすリスクがあります。
  • 排気経路のコントロールが難しい
    意図しない隙間から空気が漏れ出てしまう可能性があります。

第三種換気の長所と短所

メリット

  • 圧倒的に安い初期費用
    排気ファンと給気口のみというシンプルな構成のため、設備費用を大幅に抑えることができます。
  • ランニングコストが安い
    動かすファンが排気側のみなので、消費電力が少なく済みます。
  • メンテナンスが簡単
    構造がシンプルなため、メンテナンスは主に給気口のフィルター清掃と換気扇の掃除程度で済み、手間がかかりません。
  • 故障のリスクが低い
    機械部分が少ないため、故障のリスクも比較的低くなります。

デメリット

  • 冬は寒く、夏は暑い
    外気がそのままの温度で給気口から入ってくるため、特に冬場は冷気を感じやすく、不快に思うことがあります(コールドドラフト現象)。
  • 省エネ性能が低い
    外気をそのまま取り込むため、冷暖房で快適にした室内の熱が逃げやすく、エネルギーロスが大きくなります。
  • 換気性能が天候に左右される
    強風時などは給気量が変化しやすく、計画通りの換気ができない場合があります。

熱交換換気システムとは?

第一種換気を選ぶ際に必ずセットで検討することになるのが「熱交換」という機能です。省エネ性能と快適性を大きく向上させる重要な仕組みなので、しっかり理解しておきましょう。

熱交換の仕組みを図解で解説

熱交換換気システムとは、換気の際に捨ててしまう室内の空気の「熱」を回収し、新しく取り込む外気に移してから室内に給気する仕組みのことです。

  • 冬の場合
    暖房で暖められた室内の空気(例:20℃)を排出する際に、その熱を熱交換素子に移します。そして、外の冷たい空気(例:0℃)を熱交換素子に通すことで、暖めてから(例:16℃)室内に取り込みます。冷たい空気が直接入ってこないので快適で、暖房の負荷も軽減できます。
  • 夏の場合
    冷房で冷やされた室内の空気(例:26℃)を排出する際に、その冷たさを熱交換素子に移します。そして、外の暑い空気(例:35℃)を熱交換素子に通すことで、冷やしてから(例:28℃)室内に取り込みます。これにより、冷房の効率がアップします。

熱交換のメリット 冷暖房費の削減効果

熱交換換気システムの最大のメリットは、優れた省エネ性能による冷暖房費の削減です。

換気の際に失われる熱エネルギー(換気による熱損失)を約70%~90%も回収できるため、冷暖房にかかるエネルギーを大幅に節約できます。特に、高気密・高断熱住宅では、窓などから逃げる熱よりも換気によって失われる熱の割合が大きくなるため、熱交換換気の効果は絶大です。

また、外気を室温に近づけてから取り込むため、冬場の足元の冷えや夏場のムッとした暑さを感じにくく、一年中快適な室内環境を維持できる点も大きな魅力です。

熱交換のデメリットと注意点

多くのメリットがある一方、デメリットや注意点も存在します。

  • 高い初期費用
    熱交換機能のない第一種換気や第三種換気と比べ、設備本体が高価なため、初期費用は最も高額になります。
  • 定期的なメンテナンスが必須
    熱交換素子(エレメント)やフィルターの清掃を定期的に行わないと、熱交換率が低下したり、カビやホコリで目詰まりを起こして換気能力が落ちたりします。2~3ヶ月に1回のフィルター清掃、数年に1回の素子交換が推奨されることが一般的です。
  • 本体の設置スペースが必要
    熱交換換気システムの本体は比較的大きいため、天井裏や収納内などに設置スペースを確保する必要があります。

後悔しない換気システムの選び方

ここまで解説してきた内容を踏まえ、あなたがどの換気システムを選ぶべきか、具体的な選び方のポイントを解説します。

コスト重視で選ぶなら第三種換気

とにかく初期費用を抑えたい、シンプルなものが良いという方には、第三種換気がおすすめです。

  • おすすめな人
    • 建築費用を少しでも安くしたい人
    • 温暖な地域に住んでいて、冬の寒さがそれほど厳しくない人
    • 機械のメンテナンスに手間をかけたくない人

第三種換気は、コストパフォーマンスに優れた実績のある換気方式です。ただし、冬場の冷気対策として、給気口の位置を工夫したり、寒冷地仕様の高機能な給気口を選んだりするなどの配慮が重要になります。

快適性と省エネで選ぶなら第一種換気

初期費用がかかっても、一年中快適で省エネな暮らしを実現したいという方には、熱交換機能付きの第一種換気が最適です。

  • おすすめな人
    • 高気密・高断熱の高性能住宅を建てる人
    • 光熱費を長期的に見て節約したい人
    • 花粉やPM2.5が気になるアレルギー体質の人
    • 冬場の寒さや夏の暑さが厳しい地域に住んでいる人

特に、これからの時代に求められる省エネ住宅(ZEHなど)においては、熱交換型の第一種換気は必須アイテムと言っても過言ではありません。初期投資はかかりますが、その後の快適な暮らしと光熱費削減効果を考えれば、十分に価値のある選択です。

地域特性(寒冷地など)に合わせた選び方

お住まいの地域の気候も、換気システムを選ぶ上で重要な要素です。

  • 寒冷地(北海道、東北など)
    冬の寒さが厳しい寒冷地では、熱交換型の第一種換気が強く推奨されます。第三種換気では、給気口からの冷気で暖房効率が著しく低下し、快適性も損なわれる可能性が高いです。
  • 温暖地(関東以西の平野部など)
    冬の寒さが比較的穏やかな地域であれば、第三種換気も選択肢に入ります。ただし、省エネ性能や快適性を重視するなら、やはり第一種換気に軍配が上がります。

ダクト式とダクトレスの違いと選択基準

換気システムには、各部屋にダクト(配管)を張り巡らせて換気を行う「ダクト式」と、部屋ごとに換気扇を設置する「ダクトレス式」があります。

ダクト式

家全体を一つのシステムで管理し、計画的に換気できるのが特徴です。第一種換気で採用されることが多く、天井裏などに配管スペースが必要になります。

ダクトレス式

各部屋の壁に直接換気扇を設置する方式です。ダクトが不要なため、リフォームでの導入や、間取りの制約がある場合に適しています。第三種換気は基本的にこの方式で、第一種換気にもダクトレスタイプの製品があります。

新築で、家全体の空気環境をしっかりと管理したい場合はダクト式リフォームやコストを抑えたい場合はダクトレス式が主な選択基準となります。

換気システムのよくある質問

最後に、換気システムに関して多くの方が抱く疑問にお答えします。

第三種換気は本当に寒いの?対策は?

「はい、対策をしないと寒さを感じやすいです。」

第三種換気は外気がそのまま入ってくるため、特に冬場は給気口の近くにいると冷気(コールドドラフト)を感じます。

対策としては、以下のような方法があります。

  • 給気口の位置を工夫する
    人が長時間過ごすソファやベッドの頭上を避け、エアコンの風が当たる場所や、廊下・窓の上部など、冷気を感じにくい場所に設置する。
  • 高性能な給気口を選ぶ
    入ってくる空気の量を調整できるタイプや、外気がある程度温められてから入る寒冷地仕様の製品を選ぶ。
  • 住宅の気密性・断熱性を高める
    家全体の性能が高ければ、多少の冷気が入ってきても室温が下がりにくくなります。

熱交換システムは元が取れる?

「光熱費の削減効果と快適性の向上を考えれば、十分に元が取れる可能性が高いです。」

初期費用が高い熱交換システムですが、その投資を回収できるかどうかは重要なポイントです。単純な光熱費の差額だけで計算すると、回収までに10年以上かかるケースもあります。

しかし、この問いは「お金」だけの問題ではありません。冬の朝にヒヤッとしない快適さ、夏の寝苦しさの軽減、アレルギー物質の侵入抑制といった、数字では表せない「暮らしの質」の向上も大きなリターンです。長期的に住み続ける家だからこそ、この快適性の価値は非常に大きいと言えるでしょう。

換気口・給気口の種類と役割

換気口や給気口は、換気システムの性能を左右する重要なパーツです。

  • 給気口
    外の新鮮な空気を取り込むための入り口です。第三種換気で使われます。フィルターが付いており、虫や大きなホコリの侵入を防ぎます。花粉やPM2.5に対応した高性能フィルター付きの製品もあります。
  • 排気口
    室内の汚れた空気を排出するための出口です。第一種換気や第三種換気で使われます。主にトイレや洗面所、クローゼット内など、湿気や臭いがこもりやすい場所に設置されます。
  • 給排気口
    第一種換気(ダクトレスタイプ)などで見られ、一つのユニットで給気と排気の両方を行うものです。

24時間換気は止めるとどうなる?

「シックハウス症候群のリスクが高まり、結露やカビの原因にもなるため、絶対に止めないでください。」

24時間換気システムは、建材などから発生する化学物質(ホルムアルデヒドなど)を排出し、シックハウス症候群を防ぐために法律で義務付けられています。

電気代がもったいない、音が気になるなどの理由で止めてしまうと、汚れた空気が室内に滞留し、健康被害につながる恐れがあります。また、湿気が排出されずに結露が発生し、カビやダニが繁殖しやすい環境になってしまいます。24時間換気は、あなたと家族の健康、そして家自体の寿命を守るために、常に稼働させておく必要があります。

まとめ

今回は、住宅の換気システムの種類について、特に第一種換気第三種換気を中心に詳しく解説しました。

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 第一種換気
    給排気を機械で行う方式。快適性と省エネ性を最優先するなら熱交換付きの第一種換気がベスト。初期費用は高いが、高気密・高断熱住宅との相性は抜群で、長期的なメリットが大きい。
  • 第三種換気
    排気のみを機械で行う方式。初期費用を徹底的に抑えたいなら第三種換気が選択肢。シンプルでメンテナンスも楽だが、冬場の冷気対策は必須。
  • 第二種換気
    給気のみを機械で行う方式。クリーンルームなどで使われ、一般住宅での採用は稀。
  • 選び方のポイント
    コスト、快適性、省エネ、お住まいの地域特性など、何を最も重視するかを明確にすることが後悔しないための鍵です。

換気システムは、一度設置すると簡単には交換できない設備です。ハウスメーカーや工務店の担当者とよく相談し、それぞれのメリット・デメリットを十分に理解した上で、あなたの家族にとって最適な選択をしてください。

この記事が、あなたの理想の家づくりのお役に立てれば幸いです。

豊栄建設家づくり編集部

家づくりのヒントや住まいの最新情報を分かりやすくご紹介。皆さまの理想の住まいづくりにお役立てください。

他のコラムはこちら