家の断熱リフォーム|費用相場と断熱材の種類・効果を解説

「夏は2階が蒸し暑くて寝苦しい」「冬は暖房をつけても足元がスースーして寒い」
「最近、電気代やガス代がすごく高くなった気がする…」
もし、あなたが今お住まいの戸建て住宅で、このようなお悩みをお持ちなら、その原因は「家の断熱性能」にあるかもしれません。
家の断熱性能を高めるリフォームを行うことで、夏は涼しく冬は暖かい快適な住環境を手に入れ、さらに月々の光熱費を削減することも可能です。
この記事では、断熱リフォームを検討し始めたばかりのあなたのために、断熱の基本的な知識から、断熱材の種類、工事の方法、気になる費用相場、そして活用できる補助金制度まで、専門家が分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたの家に最適な断熱リフォームの全体像が分かり、後悔しないリフォーム計画の第一歩を踏み出せるはずです。
住宅の断熱とは?効果と重要性
まずは、住宅における「断熱」の基本的な仕組みと、なぜそれが重要なのかを見ていきましょう。断熱リフォームがもたらす具体的なメリットを知ることで、リフォームへの期待がより明確になります。
断熱の仕組みと目的
断熱とは、壁や天井、床などに断熱材を入れることで、屋外と室内の熱の移動を少なくすることです。
分かりやすい例が、魔法瓶です。魔法瓶は、内側と外側の間が真空に近い状態になっており、熱が伝わりにくいため、熱い飲み物は熱いまま、冷たい飲み物は冷たいまま長時間保つことができます。
住宅の断熱もこれと同じ原理で、外の暑さや寒さが室内に伝わるのを防ぎ、同時に室内の快適な温度が外に逃げるのを防ぐことを目的としています。これにより、冷暖房に頼りすぎなくても快適な室温を維持しやすくなるのです。
光熱費の削減効果
断熱性能が低い家は、例えるなら「穴の開いたバケツ」のようなものです。せっかく冷暖房で快適な温度にしても、その熱が壁や窓からどんどん逃げていってしまいます。
断熱リフォームを行うことで、この熱の流出を大幅に抑えることができます。その結果、冷暖房の効率が格段に上がり、設定温度を控えめにしても快適に過ごせるようになり、光熱費の大幅な削減につながります。
条件にもよりますが、家全体の断熱性能を向上させることで、年間の冷暖房費を30%~50%以上削減できるケースも少なくありません。
夏涼しく冬暖かい快適な住環境の実現
断熱リフォームの最大のメリットは、一年を通して快適な室温を保てるようになることです。
- 夏: 外からの厳しい日差しによる熱が室内に侵入するのを防ぎます。特に、屋根や天井の断熱は、2階のうだるような暑さの解消に大きな効果を発揮します。
- 冬: 暖房で暖めた空気が外に逃げるのを防ぎ、足元の冷えや部屋ごとの温度差を緩和します。家全体が魔法瓶のように保温されるため、どこにいても快適に過ごせます。
このように、断熱は季節を問わず、住まいの快適性を根本から向上させてくれます。
結露防止とヒートショック対策
断熱は、快適性や省エネだけでなく、住む人の健康を守る上でも非常に重要です。
- 結露の防止
冬場、窓や壁にびっしりとつく結露。これは、室内の暖かい空気が冷たい窓や壁に触れて冷やされることで発生します。結露を放置すると、カビやダニの発生原因となり、アレルギーや喘息といった健康被害につながる恐れがあります。断熱リフォームで壁や窓の表面温度が下がりにくくなると、結露の発生を大幅に抑制できます。 - ヒートショック対策
ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移動した際など、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす健康リスクのことです。断熱リフォームで家全体の温度差を小さくすることは、特に高齢のご家族がいるご家庭にとって、命を守るための重要な対策となります。
断熱材の種類と性能比較
断熱リフォームの要となるのが「断熱材」です。断熱材には様々な種類があり、それぞれ性能や費用が異なります。ここでは代表的な断熱材の特徴を比較し、あなたの家に合った断熱材選びの参考にしてください。
【比較表】断熱材の性能・費用一覧
断熱材の種類 | 主な素材 | 性能・特徴 | 費用相場(/㎡) |
---|---|---|---|
繊維系 | |||
グラスウール | ガラス | ・安価で普及率が高い ・不燃性が高い ・湿気に弱い | 2,000円~5,000円 |
ロックウール | 玄武岩など | ・グラスウールより高価 ・耐火性、撥水性が高い | 3,000円~6,000円 |
発泡プラスチック系 | |||
硬質ウレタンフォーム | ポリウレタン樹脂 | ・高い断熱性能 ・現場で吹き付け施工 ・隙間なく施工可能 | 4,000円~8,000円 |
ポリスチレンフォーム | ポリスチレン樹脂 | ・ボード状で施工しやすい ・水や湿気に強い | 3,000円~7,000円 |
天然素材系 | |||
セルロースファイバー | 新聞紙など | ・高い調湿性、防音性 ・環境に優しい ・専門的な施工技術が必要 | 5,000円~10,000円 |
※費用相場は材料費と工事費を含んだ目安であり、施工箇所や条件によって変動します。
繊維系断熱材(グラスウール・ロックウール)
グラスウールとは、リサイクルガラスなどを高温で溶かし、遠心力で吹き飛ばして繊維状にした断熱材です。
安価で広く普及しており、多くの住宅で使用されています。不燃性にも優れていますが、湿気を含むと断熱性能が低下してしまうため、防湿・気密シートとセットでの丁寧な施工が不可欠です。
ロックウールは、玄武岩などの鉱物を主原料とした人造鉱物繊維です。グラスウールよりも耐熱性や撥水性に優れていますが、その分費用は高くなる傾向があります。
発泡プラスチック系断熱材(ウレタンフォーム)
硬質ウレタンフォームは、現場で液体をスプレー状に吹き付けて発泡させるタイプの断熱材です。
モコモコと膨らみながら固まるため、複雑な形状の場所や細かい隙間にも密着し、非常に高い気密性と断熱性を発揮します。性能を重視する方におすすめです。
同じ発泡プラスチック系でも、ポリスチレンフォームのように、あらかじめ工場でボード状に成形された製品もあります。水や湿気に強いのが特徴です。
天然素材系断熱材(セルロースファイバー)
セルロースファイバーとは、新聞古紙をリサイクルして作られる、環境に優しい断熱材です。
綿状の材料を壁の中などに吹き込んで施工します。この断熱材の大きな特徴は、湿気を吸ったり吐いたりする「調湿性能」に優れている点です。これにより、室内の湿度を快適に保ち、結露の発生を抑制する効果が期待できます。また、繊維が密集しているため防音性能が高いのもメリットです。
部位別の断熱リフォーム工事方法
家の断熱性能は、壁・天井・床・窓といった様々な部位が関係しています。どこをリフォームするかによって、効果や費用、工期が大きく異なります。
壁の断熱工事(充填断熱・外張り断熱)
壁の断熱は、家全体の断熱性能を左右する重要な工事です。主に2つの工法があります。
- 充填断熱(内断熱)
柱と柱の間など、壁の内部空間に断熱材を詰めていく工法です。内壁を一度剥がして施工するのが一般的で、比較的コストを抑えて施工できるのがメリットです。多くの日本の住宅で採用されています。 - 外張り断熱(外断熱)
建物の柱の外側から、家全体を断熱材ですっぽりと覆う工法です。熱が逃げる「熱橋(ヒートブリッジ)」ができにくく、非常に高い断熱効果が期待できます。ただし、外壁材も一緒にリフォームする必要があるため、費用は高額になります。
天井・屋根の断熱工事
夏の強い日差しによる熱は、主に屋根から伝わってきます。そのため、天井や屋根の断熱は、夏の暑さ対策に最も効果的なリフォームの一つです。
多くの場合、天井裏(小屋裏)に入り、天井の上に断熱材を敷き詰める方法で施工します。比較的短期間で工事が完了し、住みながらのリフォームも容易です。
床の断熱工事
冬場の「足元からの底冷え」に悩んでいるなら、床の断熱リフォームがおすすめです。
一般的な工法は、床下にもぐり、床板の裏側に断熱材を貼り付けたり、根太の間に充填したりする方法です。床を剥がさずに済むため、比較的コストを抑えながら、冬の快適性を大きく向上させることができます。
窓の断熱工事
実は、家の中で最も熱の出入りが激しい場所は「窓」です。冬は暖房の熱の約58%が窓から逃げ、夏は外からの熱の約73%が窓から侵入すると言われています。
(参考:YKK AP株式会社 https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/products/articles/mado-dannen-point)
窓の断熱は、費用対効果が非常に高いリフォームです。
- 内窓(二重窓)の設置
今ある窓の内側にもう一つ窓を設置する方法。工事が1窓あたり1時間程度と手軽で、断熱効果に加え、防音効果も高まります。 - 断熱ガラスへの交換
今あるサッシのガラスを、2枚のガラスの間に空気層がある「複層ガラス(ペアガラス)」などに交換する方法です。
断熱リフォームの費用相場と内訳
断熱リフォームを考える上で、最も気になるのが費用ではないでしょうか。ここでは、工事箇所別の費用目安と、費用を抑えるためのポイントを解説します。
【工事箇所別】費用の目安
断熱リフォームの費用は、施工範囲、使用する断熱材、家の状態によって大きく変動します。あくまで一般的な目安として参考にしてください。
- 壁全体の断熱リフォーム
100万円~300万円(充填断熱の場合) - 天井・屋根の断熱リフォーム
20万円~60万円 - 床の断熱リフォーム
20万円~50万円 - 窓の断熱リフォーム(内窓設置)
1箇所あたり 5万円~15万円 - 家全体の断熱リフォーム
200万円~700万円以上(外張り断熱などを含む場合)
費用を左右する3つのポイント
リフォーム費用は、以下の3つの要素によって大きく変わります。
- 施工範囲
当然ながら、家全体をリフォームするのか、リビングだけ、寝室だけといった部分的なリフォームにするのかで総額は大きく異なります。まずは最も不満を感じている箇所から優先的に検討するのが良いでしょう。 - 断熱材の種類
前述の通り、断熱材は種類によって単価が異なります。一般的に、グラスウールなどの繊維系は安価で、硬質ウレタンフォームやセルロースファイバーは高価になる傾向があります。 - 現在の家の状態
築年数が古い住宅の場合、断熱工事の前に、壁内部の補修やシロアリ対策などが必要になるケースがあります。その場合は追加の費用が発生します。
見積もりを取る際の注意点
断熱リフォームで後悔しないためには、業者から提示される見積もりをしっかりチェックすることが重要です。
- 必ず複数の業者から相見積もりを取る
1社だけの見積もりでは、その金額が適正かどうか判断できません。最低でも2~3社から見積もりを取り、内容と金額を比較検討しましょう。 - 「一式」の内訳を確認する
見積書に「断熱工事一式 〇〇円」としか書かれていない場合は要注意です。どのような断熱材をどれくらい使うのか(材料費)、工事に何人日かかるのか(人件費)、足場の設置費用は含まれているか(諸経費)など、詳細な内訳を提示してくれる誠実な業者を選びましょう。
活用できる補助金・助成金制度
断熱リフォームは、国や自治体が推進する省エネ政策の一環として、手厚い補助金制度が用意されています。これらを活用することで、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。
国の補助金制度
2024年現在、国が主導する代表的な補助金制度には以下のようなものがあります。制度は予算に達し次第終了となるため、早めの情報収集が重要です。
- 先進的窓リノベ2024事業
内窓の設置やガラス交換など、高い断熱性能を持つ窓へのリフォームに特化した補助金です。補助額が大きく、リフォーム費用の最大50%相当が補助されることもあります。
(参考:先進的窓リノベ2024事業 公式サイト https://window-renovation2024.env.go.jp/) - 子育てエコホーム支援事業
子育て世帯・若者夫婦世帯を対象としていますが、その他の世帯も利用可能です。開口部(窓・ドア)の断熱改修や、外壁・屋根・天井・床の断熱改修が補助対象となります。
(参考:子育てエコホーム支援事業 公式サイト https://kosodate-ecohome.mlit.go.jp/)
自治体の補助金制度
国とは別に、お住まいの都道府県や市区町村が独自に補助金制度を設けている場合があります。
「〇〇市 断熱リフォーム 補助金」のように検索して、お住まいの自治体のホームページを確認してみましょう。国の補助金と併用できる場合もあります。
補助金利用の申請方法と流れ
補助金の申請は、一般的にリフォーム業者が代行してくれることが多いですが、基本的な流れは知っておきましょう。
- 補助金に詳しいリフォーム業者に相談
- 対象となる工事内容で契約
- 【重要】工事着工前に補助金の利用を申請
- 工事の実施
- 工事完了後に実績報告書を提出
- 審査後、補助金が交付される
補助金の申請は、必ず工事を始める前に行う必要がある点に注意してください。
失敗しない断熱リフォームの進め方
最後に、断熱リフォームを成功させるための具体的な進め方と、よくある疑問について解説します。
リフォーム会社の選び方
断熱リフォームの品質は、リフォーム会社の技術力に大きく左右されます。以下のポイントを参考に、信頼できるパートナーを見つけましょう。
- 断熱工事の実績が豊富か
会社のウェブサイトで施工事例を確認し、断熱リフォームの経験が豊富かどうかをチェックしましょう。 - 専門的な知識や資格があるか
建築士や施工管理技士といった資格を持つスタッフが在籍しているかどうかも、信頼性の一つの指標になります。 - 現地調査や説明が丁寧か
あなたの家の状態をしっかりと調査し、なぜこの工事が必要なのか、どんな効果が期待できるのかを分かりやすく説明してくれる会社を選びましょう。 - 保証やアフターサービスは充実しているか
工事後の保証制度や、定期的な点検などのアフターサービスがあるかどうかも確認しておくと安心です。
相談から工事完了までの流れ
- 現状の不満と希望を整理する
「冬の朝、リビングが寒い」「夏の寝室が暑い」など、具体的な悩みを書き出しておきましょう。 - リフォーム会社に相談・現地調査を依頼する
複数の会社に連絡し、実際に家を見てもらいましょう。 - プランと見積もりの比較検討
提示されたプランと見積書をじっくり比較し、疑問点は納得できるまで質問します。 - 契約
工事内容、金額、工期、保証内容などを確認し、契約を結びます。 - 近隣への挨拶・工事開始
工事が始まる前に、リフォーム会社と一緒に近隣へ挨拶回りを行います。 - 工事完了・引き渡し
工事が契約通りに行われたかを確認し、引き渡しを受けます。
断熱リフォームのよくある質問
- Q. 工事中も家に住めますか?
A. はい、多くの場合住みながらの工事が可能です。天井裏や床下、窓など部分的なリフォームであれば、日常生活への影響は最小限で済みます。家全体の大規模なリフォームの場合は、仮住まいが必要になることもあります。 - Q. 効果はすぐに実感できますか?
A. はい、工事が完了した直後から効果を実感していただけます。特に、リフォーム後の最初の夏や冬には、以前との快適性の違いに驚かれる方がほとんどです。 - Q. 築年数がかなり古い家でもリフォームできますか?
A. はい、可能です。ただし、建物の状態によっては、断熱工事の前に構造の補強などが必要になる場合があります。まずは専門家による住宅診断を受けることをおすすめします。
まとめ
今回は、住宅の断熱リフォームについて、その効果から断熱材の種類、費用、補助金制度までを網羅的に解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。
- 断熱リフォームは、光熱費削減、快適性向上、健康維持に繋がる価値ある投資
- 断熱材には様々な種類があり、予算や求める性能に応じて選ぶことが重要
- 壁・天井・床・窓など、悩みに合わせてリフォーム箇所を検討する
- 費用は工事内容によって大きく変わるため、複数の業者から相見積もりを取る
- 国や自治体の補助金を活用すれば、費用負担を大幅に軽減できる可能性がある
夏の暑さや冬の寒さを「仕方ないこと」と諦める必要はありません。断熱リフォームは、あなたの暮らしをより豊かで快適なものに変える力を持っています。
まずは、この記事を参考に、あなたの家のどこに問題があるのか、どんなリフォームが合っているのかをイメージしてみてください。そして、次のステップとして、信頼できるリフォーム会社に相談し、専門家のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
この記事の担当:

豊栄建設家づくり編集部
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