本に囲まれて暮らしたいライターの家

いま家づくり中の皆さま、そしてこれから家を建てようかな?と思っている皆さま。

予算…ローンの心配…家族との話し合い…土地探し…そもそも何から手をつければ…

そんな事をまずはぜーんぶ棚に上げて、純粋に「こんな家に住んでみたい!」と妄想してみませんか?

その妄想、豊栄建設の設計が叶えます!

…と言っても、実際に建てるわけでは、ありません。

建てることは、いたしませんが、きちんとした平面図にし、イメージパースを作成いたしましょう。そして念のため、その妄想のお値段…土地と合わせたお見積書も作成いたしましょう。

それが、この「妄想建築」と言う企画です。

参加する方(この企画内では施主さまと呼ばせていただきます)は、家への妄想を5つの項目にまとめていただき、後はワクワクお待ちいただくだけ。

一方の設計は、施主さまから出された5つの妄想を叶えるべく、これまでに培った経験値と想像力をフル稼働させてプランを作成。平面図とイメージパース、見積書が完成したら、ようやく施主さまと実際に対面し、プレゼンをします。


企画の条件は
・施主さまの妄想は文章で5項目まで、参考画像も5点まで
・図面の提案や修正などのやりとりはメールで行うこととし、基本的に2回まで。
・2回目の図面が仕上がり、見積もりが完成した時点で対面
・土地は現在分譲中の豊栄建設自社地の中から1つを指定


施主さまと設計の間で
2回行う図面のやりとりは
家の妄想にまつわる往復書簡のようなもの。

①互いに会ったことがない
②全て妄想である
ことを除いては、普段の家づくりの現場と同じです。

お読みいただく皆さまは、豊栄建設の設計がどのように施主さまの”妄想”をカタチにするのか、その過程を楽しんでください。きっと、あなたの家づくりに役立つやり取りが、あるはずです。

 

さあ。それでは記念すべき第1回の施主さまの登場です。

■登場人物

 

 ■2021年11月某日
 Mさんから5つのリクエストが届いた

とある昼下がり、僕、藤本のパソコンにメールが届いた。

今回、『妄想建築』の施主さまとして参加する、Mさんの要望がまとまったという。

会社からWebの新企画が始まるから「よろしく」と、企画主旨は説明されていたけど、まだよくつかめていない。何なんだ、妄想建築って。

追加で100個くらい質問したい気持ちを抑えて、添付ファイルを開く。


・植物園のような温室がある古民家風の平屋建て(2LDK+地下室)
・地下室は、読書用として利用
・大容量の本棚がある書斎(4~5帖)
・寝室はダブルベッドを置けるくらいでいいですが、隣接する収納は可能な限り大きく
・庭のウッドデッキに露天風呂があり、浴室から行き来できる

これらに加えて、断片的なイメージ写真と、Mさんの職業も添えられていた。


 

……。

 

え? 情報、これだけ?

というか、平屋建て? 地下室? 露天風呂?

 

あー、そうか。なんかわかってきたぞ。

 

二次元でも、三次元でもない、実体のない世界にある住まいを図面化するから『妄想建築』なんだ…

えらいもの、引き受けちゃったなあ…。

 

企画の無謀さに翻弄されそうになりながらも、出された要望から人物像をイメージし、図面作成に取りかかる。

 

ここで僕が感じたのは、Mさんは一人で住む? 女性?

 

何となくそう感じるだけで確証はない。

もしも他に家族がいるなら、本当にこの部屋数でいいのか。
というか、平屋建て、地下室、露天風呂。これをどうしよう。

 

頭の中がぐるぐるしてきて、なんか──面白くなってきた。

 

 ■2021年12月14日
 設計さんから第1回のプランが届く

豊栄建設のサイトで掲載する、新企画の第1回目に登場してみないかと、私、Mのもとに話が来た。現実的な話はとりあえず置いておいて、自分の空想上にある家をプロの設計さんが図面にしてくれるという。

 

ふと、子どものころのことを思い出した。

仲良しだったアキちゃんとチラシの裏に「こんなお家に住みたいね」と言いながら間取り図のようなものを描いて遊んでいたことを。

 

「このドアは秘密のドアで、私とアキちゃんの部屋を直接行き来できるの」と、壁から突き出た空中歩道を描いて面白がっていた。

 

つまり、そんな遊びに本物の設計さんを巻き込むらしい。

 

何だろう、そこはかとなく漂う、わくわく感…。
気づいたら、欲しいものを思いつくまま、かごの中に入れるように要望を書き連ねていた。

 

そんな、私の妄想がカタチになって届いた。

プランを見て真っ先に思ったことは

 

ガチやん…。

 

正直な話、少し手を抜くものと思っていた。

豊栄の設計さんは忙しい。年間300棟以上も建てている。
図面を描いて、修正して、打ち合わせをして、日々の業務に追われていると聞く。
だから、サイトの企画、それも一個人の妄想に、本気度全開で返してくるとは思っていなかった。

 

それは、添えられていたメッセージからも伝わってきた。

「地下室は可能な土地がないためと、露天風呂は北海道においてはあまり適さないため、組み込みませんでした。しかしながら、地下室や露天風呂にいるような時間を過ごせる工夫をしました」

設計さんの真剣さに、がぜん、こちらのボルテージが上がる。
締切が押し迫っている仕事そっちのけで、真剣に図面を眺めた。

 

💭たぶん、地下室の代わりに、本で囲まれた書斎スペースをつくってくれたんだ。たっぷり本を整理できて、おこもり感もあり、仕事や読書に集中できそう。

💭露天風呂は難しいけど、それに近い開放感を味わえるような浴室にしてくれてるのもわかる。窓からウッドテラスの植栽が見えるのか…ならば、紅葉する木を植えて、季節の風景を楽しむのもいいなあ。

💭このウォークスルークローゼットも最高だなあ。寝室とユーティリティをつなぐ動線になっているのも素敵すぎ。昔、こういう収納を見て、いいなと思ったのを思い出した。

💭二ノ字型キッチン?初めて見た。おしゃれー。

💭リビングの土間スペースもいい。観葉植物の土替えのとき、こういう場所が欲しいんだよね。

 

プランを見るごとに、ここではこうしよう、あれはここに置こうと、さらなる妄想が止まらない。

 

何これ。

た、楽しいじゃないか。

 

 ■2021年12月某日
 Mさんから変更希望が届いた

第1回目のプランを送った1週間後、Mさんから変更希望が届いた。

ポイントになりそうなのは

・キッチン前に造作カウンター
・テレビは置かないので、リビングにも造作本棚
・ウッドテラスに面した窓は、出来る限り大きな掃き出し窓に
・書斎は読書スペースに変更
・趣味室を土間書斎へ。靴を履いたまま出入りを可能にしたい など

 

間取りの変更はなし。
大きく変えるところは、趣味室を土間書斎へ、か。

 

そうなんだ。

 

ということは、やっぱり一人暮らし。
そして、「ブーツの着脱が面倒」というくだりから女性で間違いなし。

 

最初に感じた人物予想、正解。

住みたい家に、人があらわれる。

それをつかみ取りながら、この家に住むのは誰だろうと思いながら、図面を引く。

 

僕の読みと、出来上がった図面と、そこに住む人がピタリとはまったとき、とても気持ちがいい。

 

そして完成した第2回プランがこちら。

Mさんの希望どおりに修正するのもありなのだけど、一部、ちょっと違う感じで提案することにした。

これは普段から実践しているやり方の一つでもある。

施主様の希望の通り、そのままを図面に反映させるのではなく「こういう事もできますよ」という提案を入れ込むようにしているのだ。

ご希望のものだけでなく、違う選択肢もご提案しておく。

そうすることで「やはり希望のものがいい」と改めて思うこともあるだろうし、「こういう形も素敵かも」と家づくりの方向が広がっていくこともあるからだ。

 

今回、僕が提案したのはキッチン。

Mさんからは、キッチン前に造作カウンターをという希望だけど、シンクもコンロも壁側に持っていき造作カウンターだけにしてみた。

 

個人的に、これから壁づけキッチンが来るかな、と思っている。

ちなみに今、注目しているのは「GRAFTEKT(グラフテクト)」というメーカー。
手ごろな価格で、デザインがカッコイイ。

 

あえて、さまざまなスタイルを見てもらい、いろいろな可能性を知ってもらって、そこから選んでもらう。これも自由設計の良さ。

 

さて、次はMさんと初打ち合わせだ。

 

 ■2022年1月某日
 ハウジングラボ サッポロで初対面

変更のお願いを送って約1週間。
第2回目のプランが届き、このタイミングで初の打ち合わせがある。

 

わくわくしながら、ハウジングラボ サッポロにやって来た。

 

普段は打ち合わせや取材でやってくる場所。
今回は施主として敷居をまたぐ。

私の妄想にドンピシャな提案をおみまいしてきた設計さんは、どんな方なのか。

胸が高鳴る。

打ち合わせコーナーに案内されると、パソコンや図面を抱えた藤本さんがいて、お互いに照れながら名刺交換をする。そして、お待ちかねのプラン説明。

 

が、不思議な話、初対面のような気がしない。

 

この方に任せたら間違いない、という信頼感も芽生えている。

 

もちろん、このときが初顔合わせではあったけど、図面を通してすでに対話は行われていたのかもしれない、と思った。


説明を受けていく中で初めて気づいたのは、リビングだけ天井が高くなっていること。

 

「平屋であっても吹き抜けのような開放感を持たせたくて」と藤本さん。

 

このお陰で、リビングの本棚がいっぱいになったら、さらに増設も可能とのこと。

「海外の住宅みたいに、梯子を使って本を取るようにしてもいいかもしれませんね」の提案に、思わずうっとり。魂が抜けそうになった。

そして、今回の大きな変更点は「趣味室を土間書斎へ」。

土間にすることで靴を履いたまま出入りができる。

こうしたかったのは、日ごろ感じていた不便さだった。

仕事の打ち合わせで他社へ出向くと、靴を脱がないといけないところがある。特に冬はブーツが多いので、着脱している姿を見られるのがちょっと恥ずかしい。たぶん、そう感じている人はいるはず。ならば、来客対応や打ち合わせを書斎でして、そこを土間にしようと。

第1回プランの段階で、玄関ホールにトイレと手洗いスペースも設置されているので、来客があっても、玄関まわりで完結できるのも気に入っているところ。

 

あー、見れば見るほど、最高。

妄想の家が快適すぎて、今の家に住めなくなりそう。

 

が、1箇所、こちらの変更希望と違った仕上がりになっているところがあった。

 

希望としては、二ノ字型キッチンを活かしたまま、その前に造作カウンターを置きたい。

目の前で料理を作り、「はい、どうぞ」と手渡す、小料理屋ごっこがしたかったのだ。

これは譲れない。

企画の条件として“図面の修正は基本的に2回まで”と言われている。が、対面での打ち合わせの後、施主側が満足しない場合、実は、特別にもう1回だけ変更できる権利があるのだ。

 

正直なところ、もう“大”がいくつ付くかわからないほど満足していたけど、“譲れないんだよ!”感を出したくなって、鼻息荒く「キッチンを最初の二ノ字に戻してほしいです」と言ってみた。

 

ここで、わたしは
藤本さんの手腕を目の当たりにする。

 

「あえて、いろいろなパターンを見てもらいたくて」と言いながら、二ノ字型キッチンにカウンターを付けたものと、カウンターだけの3Dイメージ図を、交互に画面に映し出す。

時折、キッチンメーカーのサイトに飛んでみたり。「こんなふうに使ったら便利そうですよね」とこちらのイメージを想起させるように問いかけてみたり。

たぶん10分もない時間の中で、キッチンにまつわるさまざまな情報を、一気にインプットされたような気分だった。

そこで、ふと、思ったのは、

 

キッチンって、意外に見せたくないものが多いよなあ、ということ。

 

その代表が、ゴミ箱。
あと、食器洗剤や掃除道具、調味料も、出来れば隠したい。
それらを人目につかないカウンター下に収納できるほうがいいんじゃないか…?

 

というか、私の頭の中はすでに
小料理屋ごっこ < 造作カウンターだけ とシフトしていた。

 

どうしても残っている変更権を使おうと、あれこれ考えを巡らすものの、何も浮かばず。

 

そうか、希望が満たされると無になるんだね。

そして、思わず口から出たのは

 

「降参しました…」

 

え? 僕たち、戦っていたの? という表情の藤本さん。

 

ええ。この企画は、家づくりの熟練プロと、傍若無人な夢追い人の仁義なき戦い。
とってもとっても楽しい戦いです。

 

その後、家づくりに関わるお金の話や、ラボにあるサンプルなどを見ながら外壁を決めて、企画終了。

見積は実際の家づくりと同じように算出。ひとつひとつの算出根拠についても細かく説明してもらい、今回の企画がなかったら知りえなかったことを学べた。

外壁についても(妄想なのにw)本格的な打ち合わせをしていただいた。

 

そしてこちらが、私の妄想建築です。

「私の妄想はこのとおり。ありがとうございました!」

Data:建物総工事費 18,696,770円
土地:札幌市南区中ノ沢3丁目2号地を想定(この土地について詳しくはこちら→click!!

 

 ■2022年2月某日
 企画を終えて

藤本)

実際はまず予算があって、その制限の中でどうしても実現したいこと、それを実現するために諦めるものをすり合わせていきます。妄想建築は、予算にとらわれず、やりたいことを盛り込めるので、普段はなかなか出ないご要望があって、やりがいがありました。
あと、今回ご要望にあった土間の打ち合わせスペースや、本棚に囲まれた読書スペースを他の趣味スペースに応用するなどは、実際の設計に活かせそうです。

 

Mさん)

本当に楽しかったです。無茶なお願いをしましたが、要望をカタチにするだけでなく、私という人間も見ていただき、その家に馴染む空気まで考えた家づくりをされているように感じました。また、施工事例の取材の際、実際の施主さまから「希望は何でも伝えたほうがいい」「構造上、無理なものでも、それに見合った提案をしてくれる」と、話してくださる方がたくさんいらっしゃいます。その体験ができたのも嬉しかったです。


 

大成功となった第1回妄想建築。
次回はどなたの妄想をカタチにするのか、どうぞお楽しみに!

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