北海道の厳しい冬に負けない!屋根の特徴と対策とは?

北海道の気候は屋根にどんな影響を与える?

寒さが厳しく、毎年のように大量の雪が降り積もる北海道の冬。
積もった雪は1m2あたり約250~500kgの重量になるため、屋根に大きな負荷が掛かります。
雪の重量によって屋根が歪んだり、屋根から雪が滑り落ちる時に瓦が一緒にずれたりすると、住むには危険な状態に。
また、昼と夜の温度差によって雪が溶けると屋根で氷が形成され、すが漏れ(屋根材の隙間から室内へ水漏れが起こる現象)に繋がり、屋根や建物の劣化を早めてしまいかねません。
北海道で家を建てる場合は、気候の影響を考慮したうえで安心して暮らせる家づくりをしなければなりません。

北海道の屋根に潜む積雪のリスク

雪下ろし中の事故

積もった雪を落とす際、屋根の形状によっては地上からではなく屋根の上でなければ雪を落とせないことがあります。
雪下ろし中はどれだけ足元に注意を払っていても、足を滑らせて地面に落ちてしまう可能性はゼロではありません。
国土交通省によると除雪作業中の事故は年間1,000件以上発生し、100人以上が命を落としていると報告されており、死亡事故の約8割は65歳以上の高齢者です。
また、寒冷な屋外での重労働によって心筋梗塞を発症して亡くなる人もいます。
雪下ろしをする際は命綱やヘルメットを被り、最低でも2人以上でお互いの安全を確認しながら作業しましょう。

※参照:国土交通省「雪下ろし安全10箇条~除雪作業中の事故に注意しましょう~」
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_tk_000139.html

積もった雪が落ちて事故に繋がる

屋根に積もった雪を放置しておくと、自然と落下するものです。
しかし、重さに耐えられず自然と落ちた雪はとても重く、屋根の下に自転車や車、植木鉢などのものが置いてあった場合は破損させてしまいます。
また、人にケガをさせたり、雪で埋もれさせたりする可能性も。最悪の場合は死亡事故に繋がる恐れもあります。
晴れた日は屋根の雪が少し溶けて落雪しやすい状態になるため、特に注意が必要です。
除雪作業の際も危険が伴うため、軒下に近づく際は一緒に作業する人と声を掛け合って落雪に注意して作業を行なってください。

落ちた雪による通行の妨害

自宅の敷地内をはじめ、他の人が通らない場所に雪が落ちた場合は誰の邪魔にもなりません。
しかし、人の利用が多い歩道や道路に落雪すると通行の妨げになることも。
道幅が狭い道だと車が雪山を避ける必要が出るため、渋滞や交通事故の危険性を高めてしまいます。
落雪によって通行できなくなっている場合は、周辺の人と協力して雪を片付けなければなりません。

積雪による住宅の倒壊

大量の雪が降って住宅の屋根に積もると何百kgもの重量が掛かりに耐えられずに屋根が抜け落ちることも。最悪の場合、家が倒壊する恐れもあります。
特に空き家は雪下しをする人がいないため長い間雪が積もったままになり、近隣住民に危険が及ぶ可能性も。
1m以上積雪している場合は、できる限り速やかに雪下ろしを行いましょう。

積雪対策にもなる!北海道の気候にあった屋根の特徴

無落雪屋根

無落雪屋根は、雪を屋根から落とさずに処理できる屋根のこと。
傾斜を緩くし、雪を積もらせた状態で太陽光やヒーターを使って溶かして排出します。
雪下ろしの必要がなくなり、作業の手間や事故のリスクを軽減。軒先に融雪ヒーターを追加すると、より効果的に雪を溶かせます。

しかし、屋根に雪を積もらせる仕組みのため、建物に負荷が掛かる点がデメリット。
屋根の設計に不備があると屋根が陥没する危険性もあります。
また、排水不良による雨漏りの可能性もあるため、排水ダクトの定期的なメンテナンスが必要です。

無落雪屋根にはスノーダクト方式・フラットルーフ方式・勾配屋根方式の3つの種類があります。

スノーダクト方式

従来の山形の屋根と違って屋根の中心部分が谷になっている方式で、M字型屋根とも呼ばれています。
雪溶け水が屋根中心のダクトから排出されるため、近隣に雪解け水を落とす心配がありません。屋根の端から水も垂れないため、つららもできにくくなります。
構造上ダクト部分にごみが溜まりやすく、水漏れ性能維持のためのメンテナンスが必要になるといった手間がデメリットです。

フラットルーフ方式

ほぼ平らな勾配のない屋根が「フラットルーフ方式」。
落雪させずに屋根の上で雪を溶かし、わずかな勾配によって排水する構造です。スノーダクトがない分メンテナンス頻度を抑えられますが、雪解け水を屋根から直接排出するため、つららができやすい点がデメリットです。

勾配屋根方式

勾配のある通常の屋根に雪止めの突起を取り付けるのが勾配屋根方式で、ステイルーフやスノーストッパールーフとも呼ばれています。
屋根にとどめた雪が解けるのを待ち、勾配に沿って排水する仕組み。三角屋根といった勾配屋根の構造を変えずに無落雪屋根に変えられるメリットがあります。
他の方式と比べて積雪可能な量が少なく、積もった雪が解ける前に落雪しやすい点がデメリット。
積雪量の多い日には雪下ろしが必要になります。

陸屋根

屋上やバルコニーとしても使えるフラットな形状をした屋根を「陸屋根」といいます。
傾斜がないためメンテナンス時に足場を組む必要がなく、作業中の転落をはじめとした危険性を軽減。
屋根上の凹凸も少なく、掃除や定期点検時の手間を抑えられる点がメリットです。
家の周りに雪が落ちる可能性も抑えられるため、落雪による周辺住宅や人への被害を与えるリスクを低減します。
ただし、陸屋根は屋根と室内の天井との間に空間がないため、直射日光や外気による影響を受けやすいことがデメリット。断熱材が薄い場合、夏は暑く、冬は寒くなってしまいます。
平坦な屋根のため、水はけが悪くメンテナンスを怠ると雨漏りの原因になることも。屋根裏スペースの確保ができないため、収納量が少ないと感じる方もいるでしょう。

片屋根

片屋根とは傾斜が片方のみに流れている屋根を指し、スタイリッシュでモダンな見た目で人気がある屋根のひとつです。
太陽光パネルを大量に設置できるためエコフレンドリーな家づくりにも適している点のほか、施工コストの低さ、屋根裏に広い収納スペースを確保できる点も魅力のひとつです。
一方、大きな面積の屋根は雨風による劣化が早まる傾向があり、他の屋根形状に比べて雨漏りのリスクが高いというデメリットがあります。
北海道のような雪が多い地域で片屋根の家を建てる場合は、落雪を受け止めるための広いスペースが必要。
雪を安全に処理するスペースが不足している場合は雪止めの設置が必要になります。

切妻屋根(三角屋根)

2つのほぼ等しい長さの面で構成されており、屋根の棟に垂直な妻側から見ると、その形状が2等辺三角形に似ている「切妻屋根」。
この特徴的な形状から「三角屋根」と呼ばれることもあります。
コストパフォーマンスがよく、さまざまな建築スタイルにあわせやすい柔軟性の高さから人気のある屋根形状。
勾配をつけることで屋根への積雪を抑えられ、雪が落ちるのかを把握しやすいメリットもあります。
一方、軒がない壁面に雨や紫外線が直接当たりやすいため、外壁の劣化が進んでしまうのがデメリットです。

瓦屋根

セメント瓦・釉薬瓦・石州瓦などの瓦を使用した屋根です。
耐久性が高くメンテナンスの回数が抑えられ、部分的な葺き替えが可能なため、メンテナンスの手間とコストを削減できます。
ただし、瓦の重量が建物の耐震性に影響を与える可能性があり、地震や台風の際に瓦が滑り落ちるリスクも考慮するべき点がデメリットです。

北海道の屋根に使われる素材とは?

金属系

加工の自由度が高く耐久性もあり、軽量といった特徴を持つ金属系の素材。
金属系の屋根は防水性に優れ、屋根に積もった雪が溶けた際に家の中へ水が侵入するのを防ぐため、北海道の9割以上の住宅で金属系が使われています。
デメリットは耐熱性が低く、雨音が響きやすい点です。

※参照:住宅金融支援機構「(4)屋根に関する項目」
https://www.jhf.go.jp/files/100014104.pdf

スレート系

セメントに繊維を混ぜて板状に加工したスレート系は、色・デザインのバリエーションに富んだ屋根材です。
重量も軽く安い価格で施工できますが、他の屋根に比べてひび割れしやすく、塗装がはげると防水性が失われてしまうことも。
雪の多い北海道の場合、スレート屋根に雪が染み込むと劣化が早まるため、定期的なメンテナンスが必要です。

セメント系

燃えにくい材料を使用した耐火性に優れているセメント系。
比較的安価で購入でき、形状や色のバリエーションが豊富で熱がこもりにくく、遮音性に優れています。
しかし、重量があることで耐震性が低くなり、地震の大きな揺れに弱い点がデメリットです。
水が浸透しやすい素材のためコケやカビが生えやすく、外観を維持するためにもメンテナンスが必要。
屋根塗装をした場合、表面が滑らかになり落雪リスクが高まるため、雪止めの設置が必要になることもあります。

粘土系

瓦屋根に使われることが多い、成型した粘土を焼いて作った屋根材が「粘土系」。断熱性や遮音性に優れており、日本では古くから利用されてきた実績があります。
しかし、瓦自体の重さが耐震性を低下させるため、大きな地震が発生した際に崩れやすい点がデメリット。北海道のような雪国で使用すると水が浸透しやすく寒さによる凍害が発生する恐れもあるため、あまり使われていません。

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