変形地でも緻密な間取り設計で、中庭のある家を実現
家を建てるとき、価格、立地、広さなど、さまざまな検討材料があります。もしも、すべての条件を兼ね備えた理想的な場所が“変形地”だったらどうしますか? 四角くないので建てにくい、土地に無駄が出てしまうから建築面積が狭くなる、など、二の足を踏む方が多いのではないでしょうか。しかし、そんなことはありません。
今回ご紹介するT様のお宅は、変形地でありながら、緻密な間取り設計と工夫で、十分な広さの中庭、ゆったりできるリビングダイニング、さらにはお子様のお友だちが訪れてものびのびと遊べる多目的ホールを実現。その詳細を拝見してきました。
Q:家づくりを決断したきっかけは?
「以前住んでいたアパートの近くに、手ごろな価格の土地を見つけたのがきっかけでした」と奥様。
将来的には家を建てようと思っていたT様ご夫婦。家を建てるなら、お子様の学区が変わらず、奥様のご実家に近く馴染みのある場所でと考えていましたが、豊平区は人気エリア。土地の売りが出るとすぐさま売れてしまうため、ようやく見つけた理想の土地でした。しかし、問題がひとつ……。
「とても狭かったんです。そこで、他の土地はないかと再び探したら、運よく今の土地が見つかりました。変形地でしたが、ここを逃したら次はいつ見つかるかわからなかったので決断しました」
Q:とはいえ、やはり変形地に建てる不安はあったのでは?
「はい。最初に見た土地よりも広かったとはいえ、敷地調査の結果を見たら本当にここに、自分たちの要望を盛り込んだ家が建つのかなと心配になりました」とご主人。
加えて、住宅メーカーから「変形地だから希望に沿えない」と言われたり、四角い土地に建てることを前提とした家が多いため、変形地に応用するには追加料金が発生してコストが高くなるといった問題も出てきて、より不安が募ったそうです。
そこで出会ったのが豊栄建設でした。
「豊栄は、こちらの要望に対して、それは無理ですと一方的に断ることはありませんでした。制限がある中で工夫したり、難しいようなら代案を出してくれたりして、自分たちのやりたいことを一つひとつ叶えてくれたんです。それで豊栄にしようと決めました」
Q:家づくりでこだわったところは?
「一番のこだわりは、中庭です」と奥様。
コロナの影響で気軽に外出できない今、ベランピングやおうちキャンプが注目されていますが、まさにそれに打ってつけの空間。居室に開放感をもたせつつ、BBQをするにしても、小さなテントを張るにしても、十分なスペースを確保しました。しかも、完全に建物に囲まれているので、周囲の目も気になりません。
「わが家には小型犬もいるので、ここで遊ばせることもできます。タイルを敷いたり、日よけ用のタープを張るフックを付けるなど、より快適になるよう手を入れるつもりです。夏にはちょっとした家庭菜園もできたらいいなと思っています」と奥様。
そして、この中庭を最大限に活かす工夫が、3方向からのアクセスを可能にした動線です。
1つめは、玄関。
横木目のクロス(リリカラ/LW-4069)がアクセントになった玄関の、奥の出入口から中庭に行くことができます。中庭用の履物は、外に置きっぱなしにしたくないですよね。だからといって、出るたびに玄関から持ってくるのも面倒。ですが、玄関からアクセスできれば、その手間はなくなります。
また、こちらの玄関も考え抜かれており、土間をL字型にしたことで、玄関口で応対すれば、配達業者さんなどが来ても、家の中が見えません。そのため、リビングドアには抜け感のあるガラス戸を付けることが可能になりました。
この閉ざされていない感じも、空間の開放感を演出しています。
2つめの動線は、キッチン。
「中庭でBBQをするとき、キッチンから行きやすいと便利だと思ったので」と奥様。
お肉や飲み物など、冷やしておきたいものを冷蔵庫に置いておき、必要に応じて取りに行けばいいので、クーラーボックスを用意しておく必要がありません。終わった後も、ゴミや使った食器をダイレクトにキッチンへ運べるので、後片付けも簡単そう。
利便性だけでなく、すっきりした見た目にもこだわり、食器や電化製品などを見せないしつらえにしました。
パントリーの向かいに冷蔵庫の専用スペースを設け、カップボードや吊り戸棚は付けず、扉の付いた収納庫を設置し、そこに食器や炊飯器などを整理しています。
3.75帖のキッチンですが、上手に隙間を活用して収納スペースをつくったことで、I型キッチンを配置しても空間にこれだけの余裕ができました。
そして、中庭からの3つめの動線は、ユーティリティです。
天気がいい日、中庭で洗濯物を干すのに、この動線は欠かせません。
さらに、干した衣類は、洗面台の隣に設けたファミリークローゼットへ。わざわざ2階まで行く必要がないので、朝の忙しい時間帯の着替えや入浴時に大活躍しているそうです。
しかし、ユーティリティの魅力はこれだけではありません。ここにもT様の思いがふんだんに盛り込まれていました。
ユーティリティは、プライバシーを守りつつも、十分な広さがほしかったというT様ご夫婦。そこで、洗面所と脱衣所の間に扉は設けず、ロールスクリーンを取り付けました。
なかでも、もっともこだわったのは、洗面台です。
TOTOの実験用シンク(TOTO SK106#NW1)を取り入れた造作で、こちらに決めた理由は、「愛犬をシャンプーするとき、深くて、底が平らなボウルがいいなと思ったからです」と奥様。
通常のボウルは底が丸く、シャンプー中にワンちゃんがすべってしまい危ないと感じた方も多いでしょう。T様も同様で、ワンちゃんのシャンプーに適したボウルを探していたら、Instagramで見つけたとのこと。インテリアコーディネーターに相談したところ、理想どおりのボウルを使った洗面台が完成。使いやすさはもちろん、ウッドの風合いが活きた、ナチュラルな雰囲気がとても気に入っているとのことです。
Q:これから家づくりをされる方へのアドバイスを
「スイッチやコンセントの位置、戸の開き方など、どんなに小さなことでも確認し、自分たちの希望を伝えたほうがいいです」と奥様。
これくらいは言わなくてもわかっているだろう、と思い込むのではなく、逐一コミュニケーションをとり、要望をすべてオーダーとして伝える必要があるとのこと。そのような行き違いを防ぐためにも、担当者と何でも気軽に話せる関係性を築くことが大切かもしれません。
Q:改めて、豊栄建設で家を建ててよかったと思えるところは?
「自分たちの希望に耳を傾けてくれて、実現できるように一緒に考えてくれて、結果、狭いと感じた変形地でも、中庭もリビングも十分な広さを確保した、満足のいく家が完成したのが一番です」とご主人。
そのような前向きな話し合いがされていたためか、毎週行なわれた担当者との打ち合わせをとても楽しみにされていたそうです。
「家は出来上がってしまったので、その機会がもうないのかと思うと、ちょっと寂しいですね」と、嬉しいお言葉をいただきました。楽しい家づくりをお手伝いできた、そのことが何よりの喜びです。
このお住まいを設計した兼平に設計にあたってのポイント(特に中庭の位置)を取材したブログもございます。変形地での家づくり・採光にお悩みの方、豊栄建設の家づくりをもっと知りたい!という方はぜひお読みください。
2階の1室を多目的ホールとして使用するため、間仕切りは可動式の引き戸に。いつもは開放しておき、お子様のお友だちが来たときの遊び場にするそう。泊りのゲストが来たときは、戸を閉めきってベッドルームに。
固定概念にとらわれず、空間をそのときに応じて流動的に活用するアイデアが盛り込まれているので、全体的に広いという印象を受けます。
キッチン側も含めてさまざまな天井をシミュレーションした結果、リビング天井に木目の飾り梁を採用。空間にアクセントができ、よりナチュラルな雰囲気に仕上がりました。
主寝室には3帖のウォークインクローゼットを設置。洋服を掛けるポールのほか、手前に可動棚も取り付け、細かく整理できるようにしました。